【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜


(殿下があまりにもクロヴィス殿下の話題を避けるから、お二人は仲が悪いのかと思っていたけれど……。少なくともクロヴィス殿下の方は、アレクシス殿下を大切に思っていらっしゃる様に見える)

 本当のところはわからない。

 だが、クロヴィスがアレクシスを信じていることは確かだろう。

 でなければ、『信じてやってほしい』などという言葉は、決して出てこないはずなのだから。



(クロヴィス殿下があそこまで仰るんだもの。わたしが殿下を信じないわけにはいかないわ)

 ――エリスは、そんな気持ちでアレクシスの戦いを見守っていた。

 すると決闘開始から三分ほどが経ったところで、不意に尋ねられる。


「エリス妃――君はこういった場には不慣れだろう? 何か分からないことがあれば、遠慮せずに聞いてくれ。シオン、……君もな」

 その声に顔を上げ振り向くと、マリアンヌの向こうの席に座したクロヴィスが、こちらを見て微笑んでいた。

 これはきっと、クロヴィスなりに気を遣ってくれているのだろう。

 マリアンヌからも、

「いい機会ですもの。お兄様に何でも聞かれたらよろしくてよ。決闘のルールや勝敗のつけ方。あとは……そうね。今の戦況や、どちらに分があるのか、だとか」

 と優しく微笑まれ、エリスはシオンと顔を見合わせる。


 一応エリスは、ルール程度なら侍女から履修済みだった。

 決闘のルールはとても単純で、剣以外の武器や体術を使わないこと。
 勝敗は、片方が負けを認めるか、戦闘を続行できない状態になること。ただそれだけだ。

 つまり、剣を落としたり、背中を地面に着いたりするだけでは勝負は決しない。
 その段階で『負け』を認めれば終わりだが、認めない限り戦いは続く。
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