【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
すると、エリスがそんなことを考え始めた、その矢先。
不意にアレクシスの手が伸びてきて、エリスの頬に触れる。
「さっきからどこを見ている。顔が赤い様だが……寒いのか?」
「……っ」
刹那、びくりと肩を震わせて、一層顔を赤く染めるエリス。
それは当然、気まずさと恥ずかしさからくるものだったが、アレクシスは『寒さのせい』だと勘違いしたのだろう。怪訝そうに眉を寄せ、次の瞬間にはエリスの身体を抱き上げていた。
「殿下……っ、何を……」
「震えるほど寒いなら何故言わない。すぐに中に戻るぞ」
「――! いいえ、特に寒くは……!」
「嘘をつくな。風邪をひいてからでは遅い。まずは風呂だ。食事はその後にする」
「……っ」
嘘ではない。本当に寒くなどない。
一度はそう言おうとしたものの、エリスは結局、言うのをやめた。
理由は、そう。
アレクシスの腕の中に、このまま抱きしめられていたいと思ったから。
(……殿下はいつもお優しいけど、どうしてかしら。今日の殿下は、いつもより、ずっと……)
その理由はきっと、こうして早くに帰宅したことと関係があるのだろう。
先ほど散歩に誘ってくれたときも、アレクシスは何か言いたそうな顔をしていたから。
(部屋に戻ったら、きっと話してくださるわよね。それに、わたしも殿下に……)
――言わなきゃいけないことがある。
エリスは、自身の気持ちを改めて思い返しながら、アレクシスに身を委ねる。
そうして、アレクシスの温かな体温を噛みしめるように、ゆっくりと目を閉じた。