【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

 クロヴィスはルクレール侯爵に取引を持ち掛けた。
 これまでの悪事を一切(おおやけ)にしない代わりに、一線から退くように、と。退く為の理由に、「息子(リアム)の不祥事」を用意して。

 ――ルクレール侯爵はあっさり承諾した。彼としても、周りの目を欺くために、一線を退く正当な理由が必要だったからだ。あくまで形式的なものであろうと、「息子の不祥事の責任を取っての議長の退任」は、それを十分すぎるほど満たしていた。

 とは言え、ルクレール侯爵が数多くの不正に手を染めていることは、裏の社交界では周知の事実。
 法的な裁きを受けないからこそ、侯爵の議長の辞任は、エリスの不貞など全く問題にならないほどの大きな噂となり、社交界を騒がせることになるだろう。


 ――アレクシスは締めくくる。


「以上が、兄上が俺に話してくれたことの全てだ。ルクレール侯爵は本日付けで議長を辞任した。リアムの起こした不祥事の責任を負い、向こう三年、領地で謹慎するそうだ。加えて、リアムとオリビアの葬儀は領地で執り行うと。今後一切、二人に関わらないと念書も書かせた。君についての噂もすぐに消えるだろう。だからもう、何も心配することはない」
「――!」

 “何の心配もいらない”。――その言葉に、エリスの胸の奥に張り詰めていた緊張が、ふっとほどけていく。


 正直エリスはまだ、アレクシスの言葉の半分も咀嚼できていなかった。心の中は、まさか自分の知らないところで、そんなことが起こっていたなんて――という気持ちで溢れていた。

 けれどそれでも、自分を安心させようと言葉を尽くしてくれるアレクシスの優しさが、とても嬉しかった。
 きっと今なら、自分の気持ちを正直に言えるだろう、そう思えるくらいには。

< 332 / 344 >

この作品をシェア

pagetop