Dearest 2nd 〜Moon〜
第18章 捕まえられない蝶
第18章 捕まえられない蝶
…───数時間後。
辺りは暗闇に包まれ、空が黒いカーテンを引いた。
…────スーッ…
隣の助手席には、疲れたのかさっきからグッスリと眠りについている彩がいる。
「…はしゃぎ過ぎやろ…」
気持ち良さそうに寝息を立てている彩を見ては、溜め息混じりで微笑んでいる俺がいる。
……無防備やよなぁ…。
これがそこらの野郎やったら、即お持ち帰りされる可能性大やのに。
「…──そんだけ“男”として見られてないんかな……」
…────サラッ…
「……ん……」
ふわふわの巻き毛に触れても寝言を言うだけで、全く起きそうにない彩を見つめた。
ほのかに香るシャンプーの香りに、胸がキュッと刺激される。
…───俺はきっと。
恋愛対象でも、男でもない。
完全にそういう対象に見られてないって事は一目瞭然だった。
きっと彩はまだアイツを忘れてなんかない。
今はまだ忘れるなんて事、考えもしないだろう。
失恋ってのはそういうもんだ。
理屈でどうこうなるもんじゃない。
忘れようと思う程、忘れる事なんか出来ない自分に思い知らされるんだ。
だから嫌になる。
自暴自棄にもなる。
だけど、失恋は無駄なんかじゃない。
きっと何か次の恋愛に生かせる失敗があるって事。
失敗があるから生かせるものがある。
何かが終われば何かが始まる。
俺がそうだったように。
だからいつか───…
「前…向いてな。」
眠っている彩にさえ聞こえないくらいの声で呟いた。
“君が幸せになってくれますように”と。