警視正は彼女の心を逮捕する
妻、あらわる
 悠真さんに『結婚する』と言われてから半年後。

 鷹士さんと籍を入れ、私は賀陽(かよう)日菜乃となった。
 ……式はしていない。

 鷹士さん側は仕事上人を呼ぶとなると、恐ろしいほどにリストが膨れ上がり。
 反対に私は、家族と今の同僚そして師匠夫婦しか招待したい人がいないという、アンバランスさ。

 鷹士さん曰く『警察官だらけの会合みたいになりそう』
 でも、私としては披露宴をしてみたかった。

 けれど、断念せざるをえなかった。
 両親の参列が許されなかったから。


 **


 鷹士さんと、結婚を前提に付き合い始めたことをお母さんに報告した。

「それでね、彼がお母さん達に挨拶しに行きたいと言ってくれているの」

 さっと表情を強張らせたお母さんに『TV電話に切り替えたい』と、言われた。

 不思議に思いつつもう一度電話し直すと、画面の中にはお父さんも一緒にいる。

『賀陽さんもいらっしゃったら、同席して欲しい』

 お父さんからの要望を聞いてくれて、鷹士さんもタブレットの前に座り、画面越しの対談となった。

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