警視正は彼女の心を逮捕する
ゾッとした再会
「……今日も連絡ない……」

 私は起きた途端に携帯を掴み、画面を見る。
 数秒後には枕に突っ伏した。

 これで何日連続だろう。
 鷹士さんが音信不通である。
 私は折に触れてメッセージを送っているのだけれど、既読にもならない。

「本当に出張なのかな」

 疑惑が浮かんでくる。
 そして、綾華さんの毒の言葉がじわじわと沁みてくる。

「……私が捜査に必要だから結婚したの?」

 自分の言葉が突き刺さる。
 でも、そんなことのために一生ごとを決めてしまえるんだろうか。

 ふと。
 悠真さんの言葉を思い出した。

『警察庁に入った同期が言ってたけどね、鷹士は同期の中でも凄腕らしいよ』

 なにかのときに教えてくれた。

『どんな事件でも怯まない。身内であっても忖度しないから、公安に向いてるかもしれない』

 キャリア組の中でも、機動隊や外国の大使館に公安。
 それに新宿などの大きい警察署を巡るのがエリートコースらしい。

『でも冷徹人間とか、ホークアイって呼ばれているらしい』とも。

「つめたい人だと、仕事のためなら結婚できちゃうのかな……」

 旦那様を信じたいのに、じわじわと信じられなくなっていく。

「悠真さんはともかく。なまじ鷹士さんは信じさせてくれたから、ショックが大きい」

 呟いてしまってから落ち込む。
 
「私は二人に対して、なんて酷いことを考えているんだろう……」

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