幽霊学級
勝手なことをしてと怒られるかもしれないけれど、覚悟を決めた。
「あのさ、誠」
「え?」
大好きなアガサ・クリスティーの本をパラパラをめくっていた誠が顔を上げた。
「僕、さっきの休憩時間にユリちゃんと話をしてきたんだ」
その言葉に誠はしばらくポカンとした顔になって、それから目を大きく見開いた。
「えぇ!?」
本がバサリと音を立てて地面に落ちる。
だけど誠はそれを拾おうともしなかった。
グイッと身を乗り出して「な、なんで!?」と質問してくるその顔は、早くも真っ赤だ。
「だって、なんかこのままじゃダメな気がして……」
やっぱり言うんじゃなかったかなと思いつつ、声が小さくなっていく。
「ユリちゃんと、なんの話をしたんだ?」
質問してきたのは和彰だった。
和彰は晴れた空に飛ぶ鳥を見上げている。
「その、好きな人がいるかどうか」
「えぇ!?」
またも誠の悲鳴に近い声が響いた。
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