大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
「後はセルファ様本人に聞いてください。これからこの部屋にお呼びします。セイラム」

セルディオはセルファを呼ぶようセイラムを促した。
しかしセイラムは動かない。
そんな勝手なことをして、シルフィを激昂させるのではないかと思うと、恐ろしくて動けなかった。

「セイラムは後悔しているんじゃないか?あの日の自分の判断を」

セルディオはセイラムに語りかけた。
セイラムは葛藤していた。
3日前、セルファとセルディオの争いを間近に何もできなかった自分。
結果、セルファは外見に致命的な怪我をしてしまった。
あのとき、ローザンのことを第一に考え、セルファを隠し、事件の隠蔽を決断したのはセイラムだ。
とにかく何もなかったことにして、後に国王の判断を仰ぐのが一番だと思ったのだ。

しかし、シルフィが下したのは、セルファにとってあまりにも残酷な決断だった。
自分が隠蔽などしなければ、他に道はあったかもしれないのに。

だから、今日、稽古をしてほしいとセルディオに頼まれ、目の前でセルディオが左耳を切り落としたときに意図を汲み取り、公に医師を呼んだのだ。

「セルファに会わせて…」

ユフィーリオは震える声で懇願した。

「……かしこまりました」

セイラムは隠し扉に近づき、その向こうに控えている者にセルファを呼ぶよう指示を出した。

「ユフィーリオ様、お座りになってはいかがでしょうか。セイラム、お茶の準備を」

セルディオがユフィーリオを促す。
ユフィーリオはこっくりと頷き、ソファに座った。
ぼんやりと影武者を眺める。

「あなたも怪我をしているみたいだけど、今日怪我をしたのがあなた?」

「はい。ちょっとした不手際で、セルファ様と同じように左耳を切り落としてしまいました」

「どうして!?」

そんな偶然が怒るはずはないと思ったユフィーリオは、ますます不安になる。

「でも、これでセルファ様と外見はまた同じになりました」

「もしかして、事故ではなく、自ら…?」

セルディオはその問には答えなかった。
セイラムがユフィーリオの前に暖かい紅茶を置いた。
とても手をつける気にはなれないユフィーリオ。
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