悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「俺の名前はユリウス・フランドルだ。お前の名前は?」
「私は…」
この8年、私は自分を〝リタ・ルードヴィング〟と名乗ってきた。
もう長いこと〝ステラ〟と名乗っていない。
一瞬だけ、言葉が出なかった。
だが、それもほんの一瞬で私はすぐに言い慣れない懐かしい名前を口にした。
「ステラです」
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意識が戻って1週間、傷はまだ痛むがだいぶ元気になった私は鏡の前で1人幼い自分を見つめていた。
誰かの印象に残りそうにもない特にこれといった特徴のない少女が疲れた顔でこちらを見ている。
緑色の瞳も肩より少し長いストレートの栗色の髪も何も印象に残らない。
街に行けばどこにでもいる普通の少女だ。
だけどルードヴィング伯爵は私の本当の姿を知っている。
暗殺者から私の暗殺失敗を伝えられ、今頃伯爵は私を血眼になって探しているだろう。
最初は19歳の私を探すはずだ。
だけど何かの拍子で私を見たら。きっと私だと気づくに違いない。例え12歳の子どもになっていたとしても。
そうなればせっかく逃げ切れたのに全て台無しだ。
私はまた命を狙われるし、最悪殺される。