大好きな君と、初恋の続きを
コンティニューしますか?
CONTINUE(コンティニュー)
▶END(ゲーム終了)
──高校時代、初恋の彼が私に恋愛感情など抱いていないとわかった瞬間、頭の中に流れたのは背景が真っ黒なゲームオーバーの画面。そこで私が選択するのは終わり一択だった。
途中から再開する、なんて都合のいいこと、現実の世界ではできるわけがない。やり直したいとも思えなかった。
あれから八年。人並みに恋人もできたけれど、あの時ほど胸がときめいて、すべての景色が輝いて見えるような恋はしていない。
一生に一度の初恋は甘くほろ苦い思い出として、心の引き出しの奥のほうで埃を被っている。
十数社のゲーム会社が出展している展示会場のモニターに、ゲームオーバーになった映像が流れている。芦ヶ谷香瑚と書かれたストラップを首から下げた私は、それを眺めてなんとなく感傷に浸っていた。
桜の木が新緑に変わった四月下旬、大手イベント制作会社『グランウィッシュ』に勤める私は、大型ホールを備えたこの国際会議場でスタッフとして誘導係をしている。
今日ここで行われているのは、ゲーム業界のクリエイターやそれを目指す学生たちが参加し、講演を聞いたり交流を深めたりする大規模なイベント。ユニークなセッションや新作発表会などもあり、大勢の人が集まって盛り上がっている。
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