一途な消防士は、初恋の妻を激愛で包み込む
「私、は……」

 ちゃんと、言わなきゃ。
 その申し出はありがたいけれど、彼の好意に甘えるわけにはいかないと。
 誰にも頼らずなんとかしてみせると胸を張って、一人で生活していくべきなのにーー。

「小隊長! 隊長が呼んでるっす!」
「今行く!」

 ボソボソと聞き取りづらい声で話していたのが嘘のように。
 関宮先輩が同僚に向かって大声で叫ぶ内容を耳にした私は、後ろめたい気持ちでいっぱいになって、冷静に物事を判断できなくなっていたと自覚する。

 まるで魔法が解けるように。
 すぅっと、頭が冷えていく。

 勇気を出して。はっきり言わなくちゃ。
 覚悟を決めた私は、大きく息を吸い込みーー。

「わ……」
「俺の部屋に居て。いいね?」

 ――吐き出した直後。

 関宮先輩はそう強く念押しすると、腰元に括りつけられていた命綱を器用に解くと、同僚の元ヘと駆け出してしまった。

 どうやら覚悟を決めるのが、遅かったようだ。
 もっと早くに、彼の好意を拒絶できていたら。
 私達には、もっと違った未来が訪れていたのだろうか……?

 まだ見ぬ未来に、思いを馳せながら。
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