DEEP BLUE
あの日最後に“遠い海に行こう”と約束したまま太郎は姿を消した。
気がつけば、いつの間にか送迎ドライバーも知らないオジサンに代わっていた。
そういうヤツだったかって傷付いたりして。
入れ替わりが激しい業界だから、昨日まで来ていたキャバ嬢やボーイが突然消えることは日常茶飯事だ。
だから太郎もそういうやつだったんだと思う。
嬢仲間にも、もちろん誰にも太郎との事は言ってなかったから、彼との事はなかった事にした。
忘れるというよりも、存在を完全に無かった事にした。
あたしを除いて、周りは最初から太郎はいなかったんじゃなかったってくらい、太郎がいなくなっても何も変化がなかった。
「この疫病神」
マキには相変わらずいじめを受けていたけど、あたしはこの言葉に妙に納得してしまった。
あたしは太郎にとって疫病神だったのかもしれない。
だからマキもあの人も太郎も………
みんなみんな優しかったのに、いなくなったんだ。
………ほんとに、あれは夢だったんじゃないかな。
夢だったらいいのにな。