桃色
「ねぇ、翔さんは?今、彼女いるの?」

私が聞くと、翔さんは照れたように笑った。


「いるよ。もうすぐ、付き合って一年経つ」

「一年も?すごいじゃん!!」

「別に、すごくないよ。だから、桃子も早く幸せになれよ!」

翔さんはそう言って、私の右手を指差した。


私の右手の薬指には・・・。

ゆぅ君がくれた指輪が光ってる。

昨日、ネックレスから外して、指に付けた。

ずっと変わらない、私のお守り。



それから、翔さんは私に名刺を差し出した。


あの時と同じ。

初めて出会った時と。


「何か、あったら話ぐらい聞くから」

翔さんはそう言ってくれた。

「うん。ありがとう」


「あっ!」

翔さんはそう言って、私の手から名刺を取った。


「俺の携帯番号書いてない」

そう言いながら、名刺に自分の携帯番号を書いてくれた。

でも、もう電話なんて出来ないよ。

これ以上、翔さんに甘えられない。


「はい!」

そう言って名刺を渡してくれるから、私はありがとうって受け取った。



「時間、いいの?」

私がそう言うと、翔さんは時計を見て、

「そろそろ、やばいな。戻ろうかな・・・」

そう言った。

「ごめんね、いきなり。でも、話せてよかったよ」

「うん。俺の方こそありがとう!」


翔さんが去っていく後ろ姿をずっと見てた。

見えなくなるまでずっと・・・。


翔さんに会ってよかった。

私の気持ち、言えてよかった。

あまり、うまく言えてなかったけど・・・。


だけど、またいつか会いに行きたい。

出来るなら、ゆぅ君と一緒に・・・。





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