期日指定郵便
私は二か月ぶりに千葉の母の家に戻った。

リビングのソファー前の、いつもの自分の場所に座り込んだ。

今にも、母の声が聞こえてきそうだ。

この家をどうしたらいいのか、わからない。

おじさんに、通帳や保険を調べてほしいと言われている。

キッチンの、通帳などを入れていた引き出しを開けると、手紙が出てきた。

私がおばあちゃんに宛てて書いた手紙が、

宛名の面に、付箋が貼ってあった。

『差し出し日から10日以内にしか指定できません』と書かれていた。

レポート用紙に書かれた手紙には、濡れた後のしわが残っている。

『おばあちゃんへ

おばあちゃん、元気にしていますか。

わたしは元気です。

わたしは小学三年生になりました。

お友達もいっぱいできて、いっぱい遊んでいます。

お父ちゃんも元気ですか。

美咲ね、お願いがあります。

おばあちゃんとお父ちゃんに、お母ちゃんと仲直りしてほしいの。

だから、三月十日に遊びに来てほしい。

三月十一日のお昼でもいいから、千葉まで来てください。

お仕事があっても、きっと来てください。

じゃないと、海の水がいっぱい来て、死んじゃいます。

死んじゃうから。

きっと来てね。

バイバイ』



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