いつも君のとなりで

しかし、近距離で彼の顔を見て思い出した。

昨日、眼鏡を外した時の糸師くんの顔だ。

「あ、糸師くん?」
「はい、おはようございます。」

いつも眼鏡を掛け、前髪を下ろし近寄りがたいオーラを放っていた糸師くんは、眼鏡を外し、前髪をセンター分けにして髪型を整えており、爽やかなイケメンへと変身していたのだ。

「おはよう。」
「二日酔いは大丈夫ですか?」
「あぁ、、、実はちょっと頭痛が。」

わたしはそう言って、ハハッと笑った。

「大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。頭痛薬持って来たから。それで、何か用件?」
「あ、はい。実は営業二課で退職者が出ることになりまして、その手続きに必要な書類を頂きたいのと、人員募集をかけて欲しいと、うちの課長からの伝言です。」

周りの視線を浴びながらの糸師くんとの会話。

わたしが「うん、分かった。あとで退職届は持って行くね。」と言うと、糸師くんは「宜しくお願いします。あ、それから、お昼一緒に外で食べません?たまには気分転換に。」と、皆からの注目を浴びながらわたしをランチに誘った。

わたしは、今この状況で?と思ったが、「うん、いいよ。」と返事をした。

「じゃあ、お昼に迎えに来ますね。」

糸師くんはそう言うと、総務課の事務所から出て行った。

そのあとは、周りの女性社員からの質問攻めにあったが、曖昧な答えで笑って誤魔化し、何とかすり抜けた。

しかし、糸師くんがあんなイケメンに変身するだなんて、、、
まぁ、元々高身長でスタイルも良いから、、、でも、何で今まで隠してたんだろう。

糸師くん、これからある意味で大変そうだなぁ。

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