いつも君のとなりで
すると、「松雪主任。」と広人がわたしのデスクまでやって来た。
「はい。」
「あのぉ、大変申し訳ないんですが、滞っていた業務を手伝っていただけませんか?今日から、花村さんには一人で仕事をするよう指示を出しますので、、、今後は、このようなことがないよう気をつけます。」
「分かりました。わたしは何をすればいい?」
わたしがそう訊くと、広人は資料をわたしに差し出し「社員名簿を管理するシステムが変わったので、書き換えなくてはいけなくて、、、」と言った。
「あぁ、そういえばシステム変わったんだったわね。」
「三分の一は終わったんですが、あと残りの半分お願い出来ますか?」
「分かった。」
「ありがとうございます。」
広人はいつになく低姿勢で、浮気を反省しているのか、花村さんに裏切られて落ち込んでいるのか、何に対してダメージを喰らって凹んでいるのか分からないが、とにかく元気がなかった。
わたしは広人から資料を受け取ると、広人から頼まれた業務を午前中のうちに終わらせ、「終わりました。」と資料を返却した。
「ありがとうございます。」
「いいえ。とりあえず、それが終わったら、ちゃんと休憩取ってくださいね。」
「はい。」
そして、わたしは食堂へ飲み物を買いに行く為、事務所を出た。
すると後ろから「松雪主任。」と姿を現したのは糸師くんだった。
「あ、お疲れ。」
「お疲れ様です。」
「田岡チーフ、結構ダメージ喰らったみたいよ。」
「でしょうね。」
「ありがとう。何か、もう仕返しはいいかなって思えた。」
「もういいんですか?」
「うん、充分仕返し出来たと思うから。」
わたしがそう言うと、糸師くんは「松雪主任がそう言うなら、ミッション完了ですね。」と言い、微かに口角を上げたが、何だかどこか淋しげにも見えた。