平安物語【完】



「まぁ、ご存知ですの?

あの紅葉の木は…父と母を引き寄せてくれた木なのです。

母は、それはあの木を大切に大切にしていました…」

まん丸なお目が、徐々に涙に濡れていくのが分かりました。

しまったと思い、

「無神経な事を申しました…お許しくださいませ…」

と申しますと、ふるふると頭を振って泣き笑いのようなお顔をなさいました。


―こんなあどけなくていらっしゃる姫宮なのに、もう悲しみを堪えようとなさるのね…


私にも母を亡くした経験があるだけに、胸が塞がる気持ちがいたしました。



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