平安物語【完】



諦めて大人しく身を預け、一つ溜め息をつくと、より一層強く抱きしめて

「…申し訳ない。」

と仰いました。

意外なお言葉に、東宮様のお顔を伺うと、先ほどまでとは打って変わって悲しそうな表情をされています。


「え…?」

「あなたが嫌がらせたかった訳ではないのです。

ただ、あなたがあんなに嬉しいお手紙をくださったので、嬉しくて…。

それにあくまで慎ましいあなたのことですから、後々恥ずかしくなって今宵は来てくれないのではと、不安だったのです。

こんな情けない私を、どうぞ笑ってください。」


どうやら、私が抵抗をやめたのを呆れているのだと勘違いなさったようです。

なんと愛しい方…



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