平安物語【完】



そうして幸せ過ぎる二カ月が経ち、橘の花が咲き始めた頃、中宮様が内裏に戻っていらっしゃいました。

もう一人の若宮の登場に、女房達は並々でなく心を砕き、世間でもあれやこれやと取り沙汰しています。

左大臣様主導の華やかな行列で参内なさった中宮様の御許へ、尚仁様は五日間連続でお泊まりになりました。

そのうち一日は、昼に一の宮に会いに来てくださいましたが、尚仁様と出くわさなくなってしまった父上は、「若宮を独占できる。」と嬉しそうに振る舞っていましたが、やはり隠しきれない不安がおありのようです。



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