平安物語【完】
足早に御寝所に到着すると、すぐさま中に入ります。
中では、尚仁様が脇を向いて座っていらっしゃいました。
「帝…!」
「女御…」
急いでお側に寄ると、いきなり、尚仁様が頭を下げました。
「すまなかった。
こんな重大な事を、ずっと、隠していました。」
「まあ、お顔をお上げください。
私こそ、何も知らずあなた様を疑ってしまいました。
中宮様もあなた様も、お苦しゅうございましたでしょうに…」
そう申し上げると、ぎゅっと抱きしめられました。
「本当に、あなたは自分の事より他人の事を心配ばかりして…」
そう仰る尚仁様の背に腕を回すと、今までで一番、心が通い合ったように感じました。