平安物語【完】
―…ある夜
「今日は、姫宮様が参内していらっしゃいますとか。
お元気でいらっしゃいましたか?」
そうお尋ねすると、にっこりとなさって
「ええ、また一回り大きくなったようでした。
私のことを『もーも』と呼ぶのですよ。
御息所のことは『たーた』と呼んで纏わりついて、やはりしばらく会えなくとも親は忘れぬものなのですね。
よたよたと二三歩歩くようになったので、危なっかしくてもう。」
と、いかにも嬉しそうに仰います。