カラフル

見合わない大役

 前の学校の制服を着ていた陽は、いつしかみんなと同じ制服を身に纏って登校してくるようになった。

 ただ、制服が同じになっても目立つことに変わりはなかった。

 サッカー部の男子と昨夜遅くに放送されたサッカーの試合について熱く語っているときもあれば、蘭たちと一緒に、最近駅前にオープンしたカフェのパンケーキの話をしているときもあった。

 どんな話題でも誰とでも上手くコミュニケーションを取り、いつもクラスの中心で笑っていた。


「凛ちゃん。今日も中庭行くん?」

 でも、私と話している時間は、他の誰と比べても多い。自惚れではなくそう思う。その証拠に、今日も1人で席を立とうとする私に、隙を逃さず話しかけてくる。


「うん。先行ってて」

 話し掛けられることにも、中庭で一緒に昼食をとることにもすっかり慣れてしまった私は、躊躇うことなくそう告げる。

「りょーかい!」

 右手を挙げて敬礼のポーズを作る彼を見て、頬を緩めて教室を出る。


 そんな陽と私の関係を、よく思っていない人がいるということにも薄々気付いていた。



「ていうかさ、何なのあれ」

 トイレ内に響いた複数の足と怒ったような低い声を聞き、扉の鍵に伸ばしかけていた手を引っ込める。


「あれって何?」

「一ノ瀬よ。一ノ瀬凛!」

 突然出てきた自分の名前に身体がビクッと反応する。口調からして間違いなく良い話ではない。
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