堕ちていく

番外編

くまくんのとおいみち



森の奥に住む小さなくまくんは、今日はおばあちゃんのお家に蜂蜜のお土産を持って行く約束をしていました。

「道は真っすぐ行って、大きな川を渡って、赤い屋根の家の向こうだからね」とお母さんに教えてもらいました。くまくんは元気よく「はーい!」と返事をして、蜂蜜の入った小さな壺を背負って出発しました。

最初は覚えていた道を歩いていたくまくん。でも、きれいな蝶々を追いかけているうちに、いつの間にか知らない道に入り込んでしまいました。

「あれ?大きな川はどこかな?」

くまくんはきょろきょろと辺りを見回しました。見えるのは背の高い木ばかり。どの道を通ってきたのかも分からなくなってしまいました。

そのとき、木の上からりすくんが「くまくん、どうしたの?」と声をかけてくれました。

「おばあちゃんのお家に行きたいんだけど、道が分からなくなっちゃった」とくまくんは困った顔で答えました。

「川なら北の方にあるよ。でも気をつけて。途中に深い谷があるから、橋を渡らないとダメだからね」とりすくんが教えてくれました。

くまくんはお礼を言って、北に向かって歩き始めました。しばらく歩くと、本当に深い谷が現れました。でも橋が見当たりません。

「うーん、どうしよう」と考えていると、今度はうさぎさんが現れました。

「くまくん、橋なら谷沿いに東に歩いたところにあるよ。でも今日は風が強いから、気をつけて渡ってね」

くまくんは谷沿いを東に歩きました。確かに古い木の橋がありました。風でゆらゆら揺れていて、少し怖かったけれど、勇気を出して慎重に渡りました。

橋を渡ると、今度は三つの道に分かれていました。どの道を選べばいいのか分かりません。くまくんは座り込んで考えました。

そのとき、小さなことりが飛んできて言いました。

「くまくん、真ん中の道を行くと川があるよ。でもその前に、大きなきのこを三つ数えながら歩いてね。そうすると正しい道が分かるから」

くまくんは言われた通りに真ん中の道を歩きました。「ひとつ、ふたつ、みっつ」大きなきのこを数えながら歩くと、確かに大きな川が見えてきました。

でも川には橋がありません。どうやって渡ろうかと思っていると、川べりでかめじいさんが日向ぼっこをしていました。

「かめじいさん、川を渡りたいんです」とくまくんがお願いすると、

「よしよし、わしの背中に乗りなさい。でも蜂蜜の壺を落とさないよう、しっかり持っているんじゃぞ」

かめじいさんの背中に乗って、ゆっくりと川を渡りました。川の向こうに着くと、赤い屋根の家が見えました。

「あ!おばあちゃんのお家だ!」

くまくんは喜んで走っていきました。赤い屋根の家の向こうには、本当におばあちゃんの小さな家がありました。

「おばあちゃーん!」とくまくんが呼ぶと、おばあちゃんが出てきました。

「あら、くまくん。よく来たわね。道に迷わなかった?」

「ちょっと迷っちゃったけど、森のみんなが助けてくれたんだ」とくまくんは嬉しそうに話しました。

おばあちゃんは蜂蜜の壺を受け取って、「ありがとう。今度は帰り道も気をつけるのよ。でもその前に、温かいお茶とクッキーを用意してあるから、ゆっくりしていきなさい」と言いました。

くまくんは温かいお茶を飲みながら、今日の冒険をおばあちゃんに話しました。道に迷ったけれど、優しい森の仲間たちのおかげで、無事におばあちゃんに会えたのです。

帰り道、くまくんは来たときとは違う道を通りました。でも今度は迷いませんでした。なぜなら、森の仲間たちが道案内をしてくれたからです。

家に帰ると、お母さんが心配して待っていました。

「おかえり、くまくん。おばあちゃんは元気だった?」

「うん!それに森のみんなとお友達になれたよ」とくまくんは満足そうに答えました。

その夜、くまくんは今日の出来事を思い出しながら眠りにつきました。道に迷うのは怖いけれど、困ったときには必ず助けてくれる人がいるということを学んだ一日でした。

そして森の仲間たちとの新しい友情は、くまくんの心を温かくしてくれるのでした。



おしまい
< 38 / 38 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
25歳の朱里は、同じ部署の先輩・嵩にずっと片想いをしていた。けれども不器用な朱里は、素直に「好き」と言えず、口から出るのはいつも「大嫌い」。彼女のツンデレな態度に最初は笑って受け流していた嵩も、次第に本気で嫌われていると思い込み、距離を置き始める。 そんな中、後輩の瑠奈が嵩に好意を寄せ、オープンに想いを伝えていく。朱里は心の奥で「私は本当は死ぬほど好きなのに」と叫びながらも、意地とプライドが邪魔をして一歩踏み出せない。 しかし、嵩の転勤が決まり、別れが迫ったとき、朱里はついに「大嫌い」と100回も繰り返した心の裏にある“本音”を告白する決意をする――。
アンケート

総文字数/112,590

ミステリー・サスペンス104ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
フリーターの三枝美佳は、謝礼に惹かれて軽い気持ちでオンラインアンケートに回答する。しかし最後の設問で「消えてほしい人の名前」を書いた直後、その人物が謎の死を遂げる。 やがて「次の質問」が届き、美佳は逃れられない“選択”を迫られていく。やがて判明するのは、自分だけではなく他にも同じように“選ばされた”者たちが存在するという事実。 答えれば誰かが消え、拒めば自分が狙われる── 繰り返される悪意の連鎖と操作された運命の果てに、美佳がたどり着くのは…。
運命の契約書

総文字数/122,746

恋愛(純愛)30ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
こちらはマンガシナリオになります。 「第9回noicomiマンガシナリオ大賞」にエントリーしています。 神崎蓮は大手商社「神崎グループ」の若き専務。冷静沈着で完璧主義だが、過去の恋愛で裏切られた経験から心の壁を作っている。一方、横井美優は苦学する大学生。正義感が強く、将来は国際機関で働くことを夢見ている。 ある雨の日、美優がアルバイト先のカフェでクレーマーに困っているところを蓮が助ける。後日、美優は蓮の落とした名刺入れを返しに会社を訪れるが、そこで二人の間には大きな社会的格差があることを痛感する。 その後、大学の説明会で再会したことをきっかけに、蓮は美優にインターンシップを提案。美優は一度は断るものの、蓮の誠実さに惹かれ徐々に心を開いていく。やがて二人は惹かれ合い、恋人同士となる。 しかし、蓮の元婚約者である宮下麻里子の登場により、二人の関係に暗雲が立ち込める。麻里子は様々な策略で美優を苦しめ、ついには二人の間に決定的な誤解を生んでしまう。傷ついた美優は蓮に別れを告げ、二人は一度は道を違えてしまう。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop