イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした
中原は、水を一口飲むと、自分の資料を指で示しながら続けた。

「点検の際には、念のためエントランスの外にも一度出て、
もう一度入り直すようにしてるんです。通報を避けるためでもありますし……」

刑事は、それにうなずくだけで口を開かなかった。

神谷は、その沈黙の中で――中原の“言い訳の順序”に、ある種の“過剰さ”を感じ取っていた。

(こちらはまだ、そこまで問うていない)

本来、単なる出入り記録の確認で済むやり取りだ。
にもかかわらず、中原は「映像の動き」「通報対策」など、
“聞かれてもいない補足”を自ら加えている。

神谷は視線をゆっくりと上げた。

「……中原さん。
この居住棟に、あなたが最後に“正規の理由なく入った”のは、いつですか?」

中原の指が、書類の上でぴたりと止まった。

「え? ……正規の理由が“ない”? いや、私は、すべて業務で――」

「“理由なく”です」

神谷の声は、静かだった。
しかし、その言葉の強さは明確だった。

中原の目に、わずかな戸惑いと動揺が宿る。

防御の構えは、しばしば“自らの疑念”を証明する。

神谷は、そのわずかな揺れを見逃さなかった。
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