イケメン警察官、感情ゼロかと思ったら甘々でした
神谷は、資料の中から一枚の印刷映像を取り出した。

「……これ、見覚えありますよね?」

そこには、夜の時間帯にマンションの廊下を歩く中原の後ろ姿。
日時は、美香奈が最初に“視線”を感じた夜のものだった。

「これは“点検報告”に記録されていない。
しかも、清掃区域には該当していない居住フロアの奥まで移動している」

中原の表情が明らかに変わった。

目が泳ぎ、喉の奥で言葉が引っかかったような気配。

「……ああ、それは……あの……別の部屋で……室外機の音が気になってて……」

「では、なぜその後、現場とは逆方向に戻る際、
わざわざ階段で移動している? 通常ならエレベーターを使うはずだ」

神谷の声は抑制されていたが、明らかに鋭さを増していた。

中原は、口を開きかけて、何度か言葉を探すように視線をさまよわせた。

刑事が、ゆっくりと口を開く。

「……中原さん。
いまお話されているのが“本当のこと”なら、正確に記録していただきたい。
ですがもし、“ごまかし”や“誤魔化し”で通そうとされているなら――
それは、すぐにわかりますよ」

中原の指先が、膝の上でかすかに震えていた。

「……ちょっと……重なっただけなんです。偶然、何かの巡回と……」

その“偶然”という言葉が、すでに苦しい弁明であることを――
室内の誰もが、もう感じ取っていた。
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