暁に星の花を束ねて
新入社員、星野葵(ほしの あおい)もまた緊張した面持ちで壇上の佐竹を見つめ、話に耳を傾けている。

声に引き寄せられるように、葵は革張りのソファに深く身を沈めた。

細身の身体にまだ馴染まないスーツはまるで借り物のようで、足元のヒールすら浮いて見える。



一五ニセンチほどの小柄な体格。
艶やかな黒髪は肩先でそっと揺れ、伏し目がちな大きな瞳は深い茶色に微かな影を宿していた。



透き通るような白い肌がスーツから覗いている。

会場は上質な空間に包まれてはいるが、彼女の心はそこに居場所を見つけられずにいた。

ここはスクナヒコナテクノロジーズの本社講堂。


この世界の頂点にもっとも近い場所のひとつ。
そう形容しても過言ではない。



本社に招致されたのは全新入社員五千人のうち、わずか百人。

その名誉ある百人の席に星野葵の名もあった。



安全面などに考慮し、大半の新入社員は各地の支社や居住ブロックからのセキュアネットワーク経由での遠隔参加となっている。



入社式開始の五分前のことだった。



ふと左耳に声が滑り込み、思わず隣へと視線を向けると……。


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