死ぬ前に後悔したくないからと婚約破棄されましたが、溺愛されました
考える隙を与える前に、扉を指し示し帰るように促す。

「ゴミは、ゴミ箱にいれないといけませんよ。心配しなくても予備はこちらにあります。」


破り捨てた紙切れを、丁寧に全部拾う姿に、心が咎めたのも束の間。

ポケットから新たな婚姻届を取り出して
、何事もなかったようにテーブルに広げる。

「無理です」

広げ終わる前に、持ち上げてぐちゃりと丸めて遠くに放り投げた。

「あぁ、大丈夫ですよ、こちらにありますから。」

今度は反対のポケットから婚姻届を取り出した。

「ごめんなさい!」

彼の手から奪いとると、ビリビリと破いてゴミ箱へと落とし込む。

「あぁ、きっとホルモンバランスのせいで気が昂っているのですね、ふふ、心配いりませんよ」

今度は内ポケットから婚姻届を取り出した。

「嫌です」
「出来ません」
「放っておいてください」

破っても破っても、彼はどこからともなく婚姻届を取り出してくる。

全てのポケットから取り出し終えると、今度は袖の付近、裾の付近、靴の中、靴下の中など、様々な所から小さく折りたたんだ婚姻届をとりだしてくる。


「あなたはマジシャンですか⁉︎
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