蟀谷にピストル

風邪ひき。



ずずず。

鼻から音がする。
親は今仕事でいないし、慰めてくれる恋人もいない。

「おーい!見舞いにきてやったぜえー!」

オメーの声は頭に響くんだ。
だからさけぶな!

どこにでもあるマンションのドアだ、でけえ声を出せば軽くドア越しでも十分聞こえる。

ドンドンドン!

わーった。ドア開けるからドアを叩くな。

と悪態をつきながらダルい体に鞭を打って玄関へ向かう。

ドアを開けると、愛想の良い笑顔。

にへ、

と笑うと

「オレのおふくろがよお、お粥作ってくれたぜ!」

「…ああ、ありが…」

「オレがチンしてやっからお前は寝とけ!」

間髪入れずにしゃべる親友に頭が痛くなる。

いつもなら「お前が起こしたんだろ」とか言うけどそんな気力もない。


素直に自分のベッドに戻った。


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