【手直し中】野いちご源氏物語 一九 薄雲(うすぐも)
【2026.09.09~】手直しを始めます。一部読みにくいところがあります。ご了承ください。
 冬の寒さが厳しくなっていくにつれて、大堰(おおい)(がわ)の屋敷の暮らしは心細さを増していく。
 明石(あかし)(きみ)は毎日ぼんやりと過ごしていた。
「そのような(さび)しいところで冬を越すのはつらいでしょう。やはり二条(にじょう)(ひがし)(いん)へいらっしゃい」
 源氏(げんじ)(きみ)は心配してお(すす)めになるけれど、明石の君は思い乱れている。
<現実を知ってしまうのが怖い。東の院に移れば、お通いの少ないことを距離のせいにできなくなる。源氏の君の私へのご愛情がどれほどか、本当のところが分かってしまうのだ>
 はっきりとした返事をしないので、源氏の君は直接説得するつもりでお越しになった。
「あなたがどうしても東の院に移るのが嫌だと言うなら、姫だけでも二条の院に連れていきます。私は姫の将来にある計画をしている。それを実現するにはこのようなところで育っては困るのです。(むらさき)(うえ)にはすでに話してあります。早く姫に会いたいと言っていますよ。少し(なつ)かせたら袴着(はかまぎ)儀式(ぎしき)をして、そこで正式に紫の上の養女(ようじょ)として公表するつもりです」
 姫君のご将来を一番に考えて真剣(しんけん)にお話しになる。

<やはりそういうおつもりだったのだ>
 悪い予想どおりになっていく。明石の君は胸がつぶれるような気がした。
「ご身分の高い方にお育ていただきましても、生母(せいぼ)の身分の低さは、いずれ世間に知られましょう。かえってあなた様が、世間への()りつくろいにご苦労なさるのではと存じますが」
 姫君を手放したくなさそうに言う。母親としては当然の反応だった。
「姫が意地悪されるのではないかなどと心配する必要はありません。あちらは長年(ながねん)子どもができなくて、寂しがっているのです。私が斎宮(さいぐう)女御(にょうご)の親代わりをしていたら、あの人まで張りきってお世話を買って出たほどです。女御とはほとんど年が違わないというのに、まるで母親のように振舞っているのですよ。そんな人だから、ましてやこんな小さな姫に意地悪できるはずがありません」
 源氏の君は紫の上の理想的なご性格を教えておやりになる。
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