嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして
 目を瞬かせる遥臣を見上げ、美琴は口を開いた。

「遥臣さん――今更ですけど、昔はすみませんでした」

 再会してから今日まで、美琴は彼にきちんと謝っていなかった。突如始まった結婚生活に流されて、いや、流されているフリをしてけじめをつけずにいたのだ。

「私、婚約者の遥臣さんのこと、自分より“格下”だと思いこんで、そういう態度を取っていました。うちがあんなことになるまで、自分がどれほど思い上がっていたか気づかなかった」

 格式やレベル、社会的ステータス、美琴はそうものでしか人の価値を理解できない浅はかな人間だった。

「本当に、ごめんなさい。恨まれて当然ですけど、せめて遥臣さんの妻役をしっかり努めます。できることはなんでもします」

 彼が契約結婚の終了を言い渡すその日までがんばろう。そう心を新たにする。

 遥臣は美琴をじっと見つめてからゆっくり口を開いた。

「美琴、7年前の学園祭のとき、ここで迷子を見つけたのを覚えてる?」

「迷子?」

 思いがけないことを言われて、美琴は首を傾げた。
< 87 / 172 >

この作品をシェア

pagetop