「逃げていいんだよ」と彼は言ってくれた。
「素直なんですね」
「そう? 藍沢さんの言う通りだと思っただけだよ」

 そう言って、立ち上がった先生が洗濯物を取りに行く。
 私の言ったことを受け止めてくれた先生に胸がキュンとする。

 私も立ち上がって、終わったばかりの乾燥機を開けた。洗濯物に触れると、ふわふわでまだ温かい。乾燥が終わったばかりの洗濯物が好き。触るだけで癒される。

「なんでニヤニヤしているの?」

 声をかけられてハッとした。
 乾燥機から洗濯物を取り出した先生が不思議そうな視線を私に向けていた。

 なんでこういう恥ずかしいところばかり見られるんだろう。

「ニヤニヤしてませんよ」

 ポーカーフェイスを作って、取り出した洗濯物を、備え付けのキャスター付きのカゴに入れる。それから木製のテーブルの上で洗濯物をいつものように畳み始めたけど、先生の前でするこの行為が恥ずかしいことに気づいた。

 隣を見ると先生も同じように洗濯物を畳んでいる。私の方には全く関心がないという態度だったのでほっとした。私はサッと見られて恥ずかしい自分の下着類を青い袋に入れ、その上に畳んだばかりの自分のパジャマを乗せて隠した。これで先生の視線に私の下着が入ることはない。

 一安心して、先生に視線を向けると、黒いボクサーパンツを畳んでいるところだった。
 見てはいけないものを見た気がして、慌てて視線を逸らした。

 父のトランクスは平気なのに、先生の下着を見るのはなんでこんなに気まずいのだろう。

「あ、ごめん」

 不意に先生に言われた。
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