恋はリハビリ中!(マンガシナリオ)
#12 恋のリハビリ
〇夕方。病院のリハビリ室。
礼央は休み。平行棒で歩行訓練をしている高齢女性のリハビリを一人で見学をしている恋。
高齢女性は星先生の患者。
恋に気づいた高齢女性が軽く会釈する。
伊藤「あら可愛い学生さんね。 いつからココで働いているの?」
◯星と恋が目を合わせて苦笑いをする。
恋は毎日伊藤さんと話をしていたのだ。
恋「私、一週間前からここに来て伊藤さんともお話したことがありますよ。」
伊藤「あら、それはそれは…失礼したわね。私、ボケちゃってるのかしら。あなたのお名前は?」
恋「葉奈乃 恋です。」
伊藤「こい?」
恋「そうです。変な名前ですよね。」
伊藤「恋…恋は素敵よね。私も若い頃はたくさん恋をしたわ。」
恋(あれ? 伊藤さん、話がズレてる…。)
◯痴呆症の伊藤は話がズレても恋に話し続ける。
伊藤「あなた、好きな人はいる?」
恋「は、ハイ。」
伊藤「恋で傷つけられることもあるけど、恋のおかげで救われることもある。
どんなに落ち込むことがあってもツイてないと思うことがあっても、好きな人が居るだけで幸せよね。」
◯リハビリを終えた伊藤が頭を下げて立ち去る。
リハビリ室は恋と星だけになる。
恋「先生、伊藤さんの症状って…。」
星「重度のアルツハイマー型認知症です。
明日には、葉奈乃さんのことも今日のリハビリのことも忘れてますよ。」
恋「毎日がリセットされるんですね…なんか寂しいな。」
星「そんなことはないですよ。」
使った超音波治療器のコードを片付けながら、星が笑った。
星「忘れられるなら、毎日教えてあげれば良いだけです。
何がその人によって幸せなのかを寄り添い考えることが、私たちの使命なんですよ。」
◯あらためて恋は星先生を尊敬の眼差しで見る。
恋(やっぱりスゴイな星先生は。
でも私は、自分のコトもいまいちなのに他人の幸せに寄り添う資格があるのかな?
大体にして、私の幸せって何だろう。)
〇ふと、礼央に告白されたのに気持ちに答えられなかったことを思い出す恋。
星「葉奈乃さん、今日は時間があるから君の足のリハビリをしましょうか。」
恋「やった! じゃなくて…良いんですか?」
星「これも勉強の一環です。そこに寝て下さい。」
◯恋は、指で示されたマットの上に寝そべる。
星先生に足を触られているにも関わらず、礼央のことで頭がいっぱいだった。
男子に告白されるなんて人生で二度目…しかも同じ人に二回もなんて、考えずにはいられない。
恋(元はと言えば星先生にフラれたことが原動力になって、見返すつもりで理学療法士を目指したんだった。
付き合うことはおろか、恋愛経験はゼロ。
もしかしたら星先生以上に私って恋愛に免疫がないのかも。)
〇訓練台の上に寝かせられてあれこれと思案していると、星先生が足をマッサージする手を止めて恋の顏をのぞきこんだ。
星「葉奈乃さん、何かあったの?」
恋「え、何ですか?」
星「ずっとボーッとしてるから。…もしかして誰かに告白された?」
恋「…ッ!」
恋(す、鋭い!)
恋「な、何で私の頭の中が分かるんですか?」
〇食い気味で言い返した私に、星先生が楽しそうに笑った。
星「やっぱり? 職業柄人間観察をしがちなんだけど、葉奈乃さんは顏に出るからわかりやすいんだよね。」
恋(顏?)
〇慌ててリハビリ室の鏡を見て確認した恋を、星先生が腹を抱えて笑った。
恋が傷ついた顏をする。
恋(人が悩んでいるのに、ひどい。
しかも、私が誰に告白されたかなんて、少しも気にならないのかな。)
恋「えっと、星先生ならどうしますか?
友だちだと思っていた人から二回も告白されたら。」
星「二回も? ずいぶんモテるね。」
恋「いやいや、こんなの人生で初めてなんです!」
〇茶化そうとする星先生に恋はキレぎみに反論した。
星先生は吐息をつくと、恋が座っているマットの横に並んで座った。
星「葉奈乃さんはほっとけないというか守りたくなるタイプだからな。
いつも一生懸命で、少しドジで。」
でも、そういうことがあったなら、もう恋愛リハビリは終了かな。」
〇寂しそうな顔をする星先生に、恋はギョッとした。
恋「そんな…でも、先生のアレルギーが治らなかったら好きな人はどうするんですか?」
星「その人のことは諦めるから、大丈夫。」
◯無理に笑顔を取り繕う星先生。
恋「そんなの嫌です!」
〇恋が怒って立ちあがる。
恋「私、本当に星先生のことをリスペクトしているし大好きで推しなんです。
だから、星先生が恋愛を諦めるなんてガマンできません!」
星「ありがとう。
じゃあ、私が好きな人に告白したら葉奈乃さんも安心して、その彼の告白に答えられるかな?」
恋(先生が好きな人に告白しちゃうの⁉ あああーうううー…それもイヤッ‼)
〇恋が青ざめて指を噛む。
恋(私のオバカ!
なんで敵に塩を送りつけてその傷口にまんべんなく塗りこむようなことをしたのよッ⁉)
〇不意に恋の頭の中に伊藤の姿が思い浮かぶ。
伊藤が言っていた「幸せ」を心で反芻した。
【恋モノローグ】
好きな人がいるだけで「幸せ」
…仕方ないよね。
星先生が好きな人に告白して幸せになるなら、それが私の幸せなのかもしれない。
〇目を閉じて涙をこらえる恋。
星先生はおもむろに恋の手を優しく握り、そっと自分の唇に引き寄せる。
恋(え?)
〇手の甲に星先生の柔かい唇の感触を感じてキョトンとする恋。
星「葉奈乃さん、私はずっとあなたのことが好きでした。」
恋「エエ〜ッ!?」
【恋モノローグ】
ゆ、夢じゃないよね??
◯思わず両頬を思い切り引っ張る恋。
星「…何を面白い顏をしてるんですか?」
恋「夢かと思って。」
星「夢じゃないです。でも…。」
◯切ない顏で恋を見つめながら握ってた手を離す星先生。
星「これで私のリハビリは終了です。
ありがとう葉奈乃さん。」
〇背中を見せて立ち去ろうとする星先生に、恋が後ろから抱きつく。
恋「待ってください、先生!」
星「え?」
恋「私の恋愛リハビリが、まだ終わってません!」
〇戸惑う星に、恋が顏を真っ赤にして叫ぶ。
恋「一年前に先生にフラれてから…いや、フラれたって誤解してからずっと心が傷ついたままなんです!」
星「それは…。」
恋「私も先生を指名します‼
私の心が完治するまで、ずっとずっと寄り添ってください‼ 大・大・大好きなんです‼」
〇その場に崩れ落ちて両手で顏を覆って泣き出す恋。
恋「わーん!」
〇星が恋に向き直り、跪いて視線を合わせる。
星「ご指名ありがとうございました。」
恋「しぇんしぇい…。」
〇星が恋の頬に手を添わせて顔を近づける。
恋「…いつも困ったことが起きるたびに、ツイてないって誰かのせいにして嘆いていました。
自分のせいじゃないって見ないフリするのが楽だったから。
でも、私はもう逃げません。」
星「私も逃げません。君を大切にします。」
〇恋のおでこに、瞼に、唇にと順番ににキスをする星先生。
恋の目から涙があふれて笑顔になる。
【恋モノローグ】不器用すぎる私たちのリハビリはこれから先もずっと、おそらく永遠に続いていくはずです。
〇晴れ渡る夜空に満月が輝く。
〈終〉
礼央は休み。平行棒で歩行訓練をしている高齢女性のリハビリを一人で見学をしている恋。
高齢女性は星先生の患者。
恋に気づいた高齢女性が軽く会釈する。
伊藤「あら可愛い学生さんね。 いつからココで働いているの?」
◯星と恋が目を合わせて苦笑いをする。
恋は毎日伊藤さんと話をしていたのだ。
恋「私、一週間前からここに来て伊藤さんともお話したことがありますよ。」
伊藤「あら、それはそれは…失礼したわね。私、ボケちゃってるのかしら。あなたのお名前は?」
恋「葉奈乃 恋です。」
伊藤「こい?」
恋「そうです。変な名前ですよね。」
伊藤「恋…恋は素敵よね。私も若い頃はたくさん恋をしたわ。」
恋(あれ? 伊藤さん、話がズレてる…。)
◯痴呆症の伊藤は話がズレても恋に話し続ける。
伊藤「あなた、好きな人はいる?」
恋「は、ハイ。」
伊藤「恋で傷つけられることもあるけど、恋のおかげで救われることもある。
どんなに落ち込むことがあってもツイてないと思うことがあっても、好きな人が居るだけで幸せよね。」
◯リハビリを終えた伊藤が頭を下げて立ち去る。
リハビリ室は恋と星だけになる。
恋「先生、伊藤さんの症状って…。」
星「重度のアルツハイマー型認知症です。
明日には、葉奈乃さんのことも今日のリハビリのことも忘れてますよ。」
恋「毎日がリセットされるんですね…なんか寂しいな。」
星「そんなことはないですよ。」
使った超音波治療器のコードを片付けながら、星が笑った。
星「忘れられるなら、毎日教えてあげれば良いだけです。
何がその人によって幸せなのかを寄り添い考えることが、私たちの使命なんですよ。」
◯あらためて恋は星先生を尊敬の眼差しで見る。
恋(やっぱりスゴイな星先生は。
でも私は、自分のコトもいまいちなのに他人の幸せに寄り添う資格があるのかな?
大体にして、私の幸せって何だろう。)
〇ふと、礼央に告白されたのに気持ちに答えられなかったことを思い出す恋。
星「葉奈乃さん、今日は時間があるから君の足のリハビリをしましょうか。」
恋「やった! じゃなくて…良いんですか?」
星「これも勉強の一環です。そこに寝て下さい。」
◯恋は、指で示されたマットの上に寝そべる。
星先生に足を触られているにも関わらず、礼央のことで頭がいっぱいだった。
男子に告白されるなんて人生で二度目…しかも同じ人に二回もなんて、考えずにはいられない。
恋(元はと言えば星先生にフラれたことが原動力になって、見返すつもりで理学療法士を目指したんだった。
付き合うことはおろか、恋愛経験はゼロ。
もしかしたら星先生以上に私って恋愛に免疫がないのかも。)
〇訓練台の上に寝かせられてあれこれと思案していると、星先生が足をマッサージする手を止めて恋の顏をのぞきこんだ。
星「葉奈乃さん、何かあったの?」
恋「え、何ですか?」
星「ずっとボーッとしてるから。…もしかして誰かに告白された?」
恋「…ッ!」
恋(す、鋭い!)
恋「な、何で私の頭の中が分かるんですか?」
〇食い気味で言い返した私に、星先生が楽しそうに笑った。
星「やっぱり? 職業柄人間観察をしがちなんだけど、葉奈乃さんは顏に出るからわかりやすいんだよね。」
恋(顏?)
〇慌ててリハビリ室の鏡を見て確認した恋を、星先生が腹を抱えて笑った。
恋が傷ついた顏をする。
恋(人が悩んでいるのに、ひどい。
しかも、私が誰に告白されたかなんて、少しも気にならないのかな。)
恋「えっと、星先生ならどうしますか?
友だちだと思っていた人から二回も告白されたら。」
星「二回も? ずいぶんモテるね。」
恋「いやいや、こんなの人生で初めてなんです!」
〇茶化そうとする星先生に恋はキレぎみに反論した。
星先生は吐息をつくと、恋が座っているマットの横に並んで座った。
星「葉奈乃さんはほっとけないというか守りたくなるタイプだからな。
いつも一生懸命で、少しドジで。」
でも、そういうことがあったなら、もう恋愛リハビリは終了かな。」
〇寂しそうな顔をする星先生に、恋はギョッとした。
恋「そんな…でも、先生のアレルギーが治らなかったら好きな人はどうするんですか?」
星「その人のことは諦めるから、大丈夫。」
◯無理に笑顔を取り繕う星先生。
恋「そんなの嫌です!」
〇恋が怒って立ちあがる。
恋「私、本当に星先生のことをリスペクトしているし大好きで推しなんです。
だから、星先生が恋愛を諦めるなんてガマンできません!」
星「ありがとう。
じゃあ、私が好きな人に告白したら葉奈乃さんも安心して、その彼の告白に答えられるかな?」
恋(先生が好きな人に告白しちゃうの⁉ あああーうううー…それもイヤッ‼)
〇恋が青ざめて指を噛む。
恋(私のオバカ!
なんで敵に塩を送りつけてその傷口にまんべんなく塗りこむようなことをしたのよッ⁉)
〇不意に恋の頭の中に伊藤の姿が思い浮かぶ。
伊藤が言っていた「幸せ」を心で反芻した。
【恋モノローグ】
好きな人がいるだけで「幸せ」
…仕方ないよね。
星先生が好きな人に告白して幸せになるなら、それが私の幸せなのかもしれない。
〇目を閉じて涙をこらえる恋。
星先生はおもむろに恋の手を優しく握り、そっと自分の唇に引き寄せる。
恋(え?)
〇手の甲に星先生の柔かい唇の感触を感じてキョトンとする恋。
星「葉奈乃さん、私はずっとあなたのことが好きでした。」
恋「エエ〜ッ!?」
【恋モノローグ】
ゆ、夢じゃないよね??
◯思わず両頬を思い切り引っ張る恋。
星「…何を面白い顏をしてるんですか?」
恋「夢かと思って。」
星「夢じゃないです。でも…。」
◯切ない顏で恋を見つめながら握ってた手を離す星先生。
星「これで私のリハビリは終了です。
ありがとう葉奈乃さん。」
〇背中を見せて立ち去ろうとする星先生に、恋が後ろから抱きつく。
恋「待ってください、先生!」
星「え?」
恋「私の恋愛リハビリが、まだ終わってません!」
〇戸惑う星に、恋が顏を真っ赤にして叫ぶ。
恋「一年前に先生にフラれてから…いや、フラれたって誤解してからずっと心が傷ついたままなんです!」
星「それは…。」
恋「私も先生を指名します‼
私の心が完治するまで、ずっとずっと寄り添ってください‼ 大・大・大好きなんです‼」
〇その場に崩れ落ちて両手で顏を覆って泣き出す恋。
恋「わーん!」
〇星が恋に向き直り、跪いて視線を合わせる。
星「ご指名ありがとうございました。」
恋「しぇんしぇい…。」
〇星が恋の頬に手を添わせて顔を近づける。
恋「…いつも困ったことが起きるたびに、ツイてないって誰かのせいにして嘆いていました。
自分のせいじゃないって見ないフリするのが楽だったから。
でも、私はもう逃げません。」
星「私も逃げません。君を大切にします。」
〇恋のおでこに、瞼に、唇にと順番ににキスをする星先生。
恋の目から涙があふれて笑顔になる。
【恋モノローグ】不器用すぎる私たちのリハビリはこれから先もずっと、おそらく永遠に続いていくはずです。
〇晴れ渡る夜空に満月が輝く。
〈終〉


