先輩はぼくのもの

危険な夏の夜


…今、なにが起こってるの??


わたしの唇に触れる温かな感触。


そして、少ししてゆっくりと離れていく。



わたしはまだ今の状況を理解することが出来ない。




「先輩」

優しい声のトーン。
その声にビクッとなる。

「答えてくれる気になった?」


なにをどう答えたら…


狩谷くんの手がわたしの左頬に触れる。


「弟とキスした感想は?」


バシッ!!

狩谷くんを突き放した。



「バッ…バカなこと言わないで!!最低だよ!!」

そう言って部屋を出て行った。



意味わかんない
なんであんなこと聞くの?


なんでキスしたの?



〈先輩、ぼくのこと好きなんですか?〉


なに焦ってんの…わたし



—————————————



「ただいま試食販売を行なっております」

夏休みはとにかく稼ぐ!!
今日は短期バイトで、とあるスーパーに試食販売の仕事でやってきた。


焼肉のタレの試食販売だけど、なかなか足を止めてもらえないなぁ。



チラッと少し向こうで同じように試食販売をしている女の子を見る。
なんかよくわからないけど…朝の出勤の時から扱いが全然違うんだよなぁ。
わたしにはテキトーなのに、あの子には荷物置く場所や休憩のことまで全部丁寧に説明してて…

はぁー…
なんか、大人の嫌なとこ見た感じがする。



「これ、美味しいのかしら?」

「あっ!はい!新しく出たタレなんです」

プレートで焼いていたお肉をタレの入った紙皿に入れて渡す。



「あらっ本当ね♪1ついただこうかしら」


ぱぁぁぁ

嬉し過ぎてわたしの周りにお花が咲いたに違いない。


女性が買っていってくれた。


また少しして

「お姉さん、それ食べてみたーい」

女子高生やおじさんなど色んな人が足を止めてくれるようになり、気づけば退勤の18時になっていた。


結構売れた。
嬉しい!!!

売った個数をメモして、スーパーを後にする。



今日のスーパーは地元から急行で40分の距離の場所だったから疲れた。。

ラッキーなことに座れた電車。


うと・・・
気づけば眠ってしまっていた。




「ー…駅、終点です」


ん……??
なんか聞こえる。。

でもまだ起きたくない。
なんだろう、なんだかすごく温かくてホッとする。
心地いい。



「ー…駅、終点です」

今度はハッキリと聞こえた終点の言葉。


終点!!??

一気に目が覚める。


しまった…
わたし、寝過ごした。


「やっと起きた」


あれ?
わたし、この声知ってる。

チラッと左隣を見る。



「狩谷くん…!」


なんで狩谷くんがいるの!?


「おはよ、先輩」

そ、そんな破壊力が凄まじい笑顔で言われましても…!


あれ?
さっき寝心地がよかったのは、隣に狩谷くんがいてもたれさせてくれてたから!?


「いつから隣に…?」

「んー、わかんないけどぼくが座ったらすでに先輩は寝てました」


そうなんだ、、、

「起こしてくれればよかったのに」

「だって先輩、ヨダレ垂らして幸せそうに寝てたから」

「えっ!!!」


ヨダレ!?
わたしは急いで口元を隠す。


「あはは。ヨダレは嘘です」


あのキスがなかったかのように、普通に話して普通に接してくる狩谷くん。


わたしが気にし過ぎなの?

「寝過ごしちゃってごめんね」


狩谷くんにとってはなんでもなかったんだ、きっと。


「先輩といれたからラッキーです。ありがとうございます」


もう…
なんでそんなこと言うの?


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あれからと言うもの、、、四六時中狩谷くんのことを考えてしまっている自分がいる。
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