先輩はぼくのもの

まだ知らないきみの95%


夜中3時。


寝れない。
寝れるわけない。


あんなことがあったのに。

数時間前の出来事を思い出す。



ぞく…

狩谷くんの目や言動に怖く感じることがあるのに
なぜかそれ以上に惹きつけられるこの気持ち。

ときめいてしまう気持ち。



付き合うようになってまだ日は浅いけど、だけどわたしは狩谷くんを全然知れていないんだと思う。


さっきもわたしが怒らせちゃったんだ。


部屋に戻って冷静になって考えたらわかった。
前に田村くんのことで不安にさせたのに、また田村くんの話をしてしまったから…だよね、きっと。


ただ、田村くんすごく心配してくれてたから…伝えたかっただけなのにな。


どうしたら…伝わるんだろう。



ーーーーーーーーーー


「先輩、起きてください」

「…ん〜」

「遅刻しますよ」

「だい…じょぶ……」

「一緒に朝ご飯食べましょ?」

「…………」←もはや無視で寝続ける



「あと5秒で起きなかったら、エッチしましょうか」


ガバッ!!!!!

朝から聞き間違いか!?というような言葉が耳元で囁かれた。


「あ、起きた。おはようございます」

目の前にはキラキラ光る可愛い笑顔。



寝起きのわたしは今の状況がまだ判断出来ない。



「寝起きの先輩も可愛いですね」


ゴフォッ!!
寝起きには刺激が強すぎる言葉に笑顔。


「狩谷くん!!お、おはよう!!」

そしてやっと完全に目が覚めて、今の状況を把握した。


わたしはボサボサ髪を手櫛で急いで整え、顔は少し伏せる。

目ヤニとかも絶対ヤバイから!!

狩谷くんより早く起きて完璧に用意しておこうと思ってたのにー!
なかなか寝付けず、朝方に寝てしまったせいで寝坊した。



「可愛い先輩。早くリビング行こ?」

そう言って手を出す狩谷くん。

昨日の夜の出来事はなかったかのように普通で、逆にちょっと戸惑ってしまう。




なんか…

「昨日から怒涛っすね、なんか」


えっ!心読まれてた!?


一緒に大学に登校中。



「まさか先輩の家に泊まってそこから大学行くなんて夢みたいで」


きゅん。
あ〜なんでそんな可愛いことを言えるんだろう。



こうしてるとわたしの“知ってる狩谷くん”で、明るくて優しくてしっかりしてる男の子ってイメージ。


だけど…昨日見たような暗く冷たい感じの表情は
“知らない狩谷くん”で
わたしは好きな人を、まだ全然知ることが出来ていないんだと実感してしまう。



「おはよー!って…えっ!?狩谷くん、どうしたの!?」

大学に着いてすぐ亜紀に会った。


「昨日派手に転んじゃって…恥ずかしいです」

あ…そっか。
本当の理由は黙ってる方がいいよね。。


「折ったの!?気をつけなきゃダメだよ!」

「幸いヒビなんで。ありがとうございます、気をつけますね」


亜紀がわたしの方に向いた。


「詩、力になってあげなね。あたしも手伝えることなんでもするし!」

亜紀はほんと優しい。
ハッキリ言ってくれるし、そしてすごく思いやりのある人。


「うん、ありがとう」

「ありがとうございます。詩先輩にはすでに支えてもらってばかりです。だって…」


「よぉ!」
後ろから声がした。


「昨日詩先輩の家に泊まりましたし。ご飯も一緒に食べてお風呂も入りましたよ」

そしてその声がしたのとほぼ同時ぐらいに狩谷くんがお泊まりを暴露した。
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