先輩はぼくのもの

「おーい!こっちだよー!」

食堂に行くと詩先輩が嬉しそうに手を振っている。


あーー好き。



ユキの泣き顔がチラつく。




「ふたりですか?」

「うん!…いやだった?」


まさか。


「ふたりがよかったんで嬉しいです」

先輩が可愛く笑う。
この笑顔に心の底から癒されるんだ。


いそいそとお弁当を出す先輩。


「なんかさ、意外に大学で一緒にお昼食べるの初だよね?」

「そうですね」

「えへへ。嬉しいー」


なに、先輩。
こんな大勢がいるところで襲ってほしいの?
なんでそんなに可愛いの。


「ねぇ狩谷くん」

「はい」

「け……」


け?????

そこから言葉が続かない先輩。


「ん?どうかしたんですか、先輩」

「いや!!なんでもない!!ただ…けつ……」


なにをモゴモゴしてるんだろう。


「先輩、やっぱへんー…「血液型はなんですか!?」

そこそこの声量で血液型を聞かれた。


「…Aっすけど」

顔を真っ赤にしてた先輩がホッとしたような表情をした。


「じゃ、じゃあ!!誕生日は!?」

「2月8日です」

「好きな食べ物と色は?」

「ハンバーグで、そうだなー…色は青ですかね」

「えっと、、身長は!?」

「高校時測った以来ですけど181ですかね」

「わっやっぱり高いー」

先輩から質問攻めにあう。


ん?
なんかチラチラ下を見てる。
なに見てんだろ?


「先輩、なに見てんの?」

「おわーーー!!」

叫んだ拍子に見ていたメモのような紙を落とした先輩。


「先輩、声大きいです」

「ご、ごめんなさい」


落ちたメモを拾った。


「あ!見ちゃダメ!」

先輩の制御も虚しく、ぼくはチラッとメモが見えてしまった。
そこには


【狩谷くんの残り95%を知るリスト】
と書かれており
・血液型
・誕生日
・身長
・好きな食べ物、色
・得意なこと
・嫌いなこと

など、もっとたくさん箇条書きに書かれていた。


ぼくの残り95%を知る・・・?

「先輩…これ」

ぼくの手から急いでそのメモを取り返した先輩の顔は真っ赤。



「…だって、、彼女なのに…狩谷くんのことまだなにも知らないから」

そして少し切なそうな表情をする。


あ、スイッチ入る。


「なにそれ。ぼくのこと色々知りたいんですか?」


「えっと…そりゃ彼女ですから」

一生懸命照れてるのを隠してる先輩。

ねぇ先輩わかってる?
そんな仕草ひとつも、全部ぼくを夢中にさせてるってことに。



ふにっ

先輩の唇にうっすらついていたケチャップを指で拭った。


「うま」

「バッバカ!人がたくさんいるところでダメだよ!!」

「いいじゃないですか。先輩はぼくの彼女でしょ?」


ゆでダコみたいに顔が真っ赤な先輩。
これ以上からかうのはかわいそうだな。


「もっと聞いて。ぼくを知ってほしい」

そう言うと、先輩はまた嬉しそうに笑った。



「先輩の誕生日は?」

「11月1日だよ」

「もうすぐじゃないですか」





でもさ、先輩

“本当のぼく”を知った時
同じように笑ってくれるのかな?



クズで
独りよがりで


先輩を手に入れるためなら
なにもいとわない


そんなぼくを受け入れてくれますか?


ぼくは
このシアワセを守るためなら


やっぱりなにもいとわない。


先輩とぼくの世界があればいいんだ。
< 44 / 91 >

この作品をシェア

pagetop