私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
 馬のそばまで行く最中、リュシアン様は何度も私に謝ってくれた。

「レーヌ、本当に悪かった。よく考えたら、大勢が粉を入れるところまで見ているのにそのときは誰も何の指摘もしないなんておかしいよな。考えればすぐわかることなのに俺は……」

「いいんです、リュシアン様。私は日ごろの行いが悪いので当然です」

 私は慌てて両手を振った。そもそも何の前科もなければ、リュシアン様だって令嬢たちの言葉をあっさり信じなかったはずなのだ。しかしリュシアン様は沈痛な面持ちで首を振る。

「いいや、過去のことは関係ない。お前はちゃんと反省していたんだろう? それなのに俺はお前を信じなかった」

 リュシアン様は顔を俯け、つらそうに言う。私はなんて心の広い方なのだろうと感動してしまった。

 あんなにひどいことばかりした私を、彼はそれでも信じてくれるのだ。疑ったことを悪いと思ってくれるのだ。

 私は笑顔で言った。


「気にしないでください! それに、お茶会で毒を入れたというのは嘘ですが、私がやったには違いありませんから」

「……は?」

 リュシアン様は目を見開く。私は呆気に取られている彼に説明した。

「私、ちゃんと対策をしてたんです。前日にメイドの一人を買収して。それでリュシアン様に毒入りのカップを渡してもらうように頼みました。今回はご令嬢たちがぐるになって私がやったと証言したせいで失敗してしまいましたが……」

「お前が犯人であってんじゃねーか!!」

 悲しげだったリュシアン様の顔はたちまち怒り顔になり、思い切り私を突き飛ばした。そして倒れ込んだ私の髪を引っ張って、無理矢理起き上がらせる。

「い、痛いです、リュシアン様……!」

「本当にお前は何度も何度も……! そもそもお前が毒を盛らなければ、令嬢たちにはめられることもなかったんじゃないか! ふざけるな!! 申し訳ないことをしたと悩んでいた俺の時間を返せ!!」

 リュシアン様は私の髪をぐいぐい引っ張る。私はひぃ、と小さく叫び声をあげた。

「ご、ごめんなさい……。だってリュシアン様、ほかのご令嬢に会わないでって言っているのに、全然聞いてくれないんですもの……。あんなお茶会まで開くなんて」

「つきあいがあるんだから仕方ないだろ!? というか、不満があっても犯罪行為に手を染めるのはやめろ!」

「そ、そうですよね、ごめんなさい……」

 私がしゅんとしてうつむくと、リュシアン様はやっと髪から手を離してくれた。呆れきった顔でこちらを見ている。

「ゆ、幽閉は続行でしょうか……」

 苛立たしげな顔をしているリュシアン様に尋ねると、彼は溜め息交じりに言った。

「……幽閉は終わりだ。もう出してしまったのだから仕方がない」

「ありがとうございます、リュシアン様……!」

「その代わりよく反省しろよ」

 リュシアン様は怖い顔で釘を刺した。私は何度もこくこくうなずく。


 リュシアン様は散々お説教をした後で馬に乗せてくれた。私が馬に乗ると、リュシアン様もその後ろに乗る。

 抱きしめられているみたいな体勢が嬉しくなって胸に頬ずりをしたら、必要以上にくっつくなとぴしゃりと叱られた。

 おずおず前の方に体をずらすと、危ないからそこまで離れるなとまた叱られる。

「リュシアン様、私だめな子でごめんなさい……」

「だめな子なんて可愛いものじゃなくて、犯罪者の間違いだろ」

「うぅ……仰る通りです……」

 しょんぼりしながら言ったら、リュシアン様は「もういい、今回のことは許してやる」と仕方なさそうに言ってくれた。
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