私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

21.その後

 ルナール公爵への処分が決まってから、三ヶ月が経った。

 幽閉が決まったルナール公爵同様、公爵の計画に深く関わり王太子を直接陥れようとした罪で、オレリア様も公爵とは隔離されて同じ屋敷に幽閉されている。

 公爵が次の国王に仕立て上げようとしたセルジュ様は直接関わっていなかったため幽閉まではされないそうだけれど、騒ぎが多少落ち着く頃にはいつの間にか王都から姿を消していた。

 爵位も屋敷も没収され、身内にこんな悪評が立ってしまった状態では、王都に居づらくなって逃げたのだろうなんて噂されていたけれど、実際のところはどうなのだろう。

 煌びやかだったルナール公爵邸はたった数ヶ月ですっかり寂れてしまい、今では悲しげに佇んでいる。


「過去に魔女を無実の罪で幽閉して、現在は自分が幽閉されるとは、皮肉なものだな」

 ルナール公爵のその後を聞かされた時、リュシアン様は冷めた顔でそう言った。

「ああ、リュシアン様、すぐ怒ってかっとなるところも素敵ですが、その冷酷な顔も素敵です……!」

「いつも怒らせてるのはどこのどいつだよ」

「いひゃい、いひゃいです、リュシアンさま!」

 リュシアン様の非情な目をうっとり眺めながら言うと、頬を思いきりつねられてしまった。


「だいたいお前な、会議に乱入してくる奴があるか! 今回はうまく行ったからいいものの失敗したらどうするつもりだったんだ!?」

「ご、ごめんなさい。だってリュシアン様がピンチだと思ったら、いてもたってもいられなくて……」

「何の対策もせずに追及会議に出向くわけないだろうが。夜のうちに大急ぎで公爵家の罪を証言できる者がいないか探して、なんとか当時の監視係を見つけて呼び寄せておいたんだ」

 リュシアン様は私の頬を引っ張りながら呆れ顔で言う。そういえば、会議の日の朝、リュシアン様は目の下に隈を作って疲れきった顔をしていた。きっと寝ずに準備をしていたのだろう。

「けれど、それならどうしてドミニクさんを最初から会議に呼ばなかったんですか? はじめに呼んでしまえば、すぐに無罪だとわかってもらえたんじゃ……」

「タイミングを測ってたんだよ。下手したら叔父上にうまく言いくるめられて、証言を信じてもらえない可能性もあるだろ」

「まぁ……! そんなに考えていらしたのに、私ったら軽率な真似を……!」

「本当だよ」

 リュシアン様は溜め息交じりに言う。それからぽつりと呟いた。

「それに、できることなら平穏に暮らしている平民を巻き込みたくなかったしな……」

 その一言で、私は自分の考えのなさに顔が熱くなった。そうだ。今回は無事に証言が認められて公爵の罪を明らかにできたからいいものの、失敗すればドミニクさんに被害が行く可能性もあったのだ。

 平民の身分で公爵家を敵に回せば、どんな被害が出るのかわからない。

 私はドミニクさんがそんな危険を冒してやって来たことに、今まで考えも至らなかった。

「トマスに言ったら多分俺が助かること最優先で動くだろうから、ドミニク殿を不都合なタイミングで呼びかねないと思って黙ってたんだ。それだけじゃなく、お前のことも対策しておくべきだった」

「そ……うですね」

 私は悲しくなって俯いた。やっぱり私はリュシアン様と何もかも違う。自分のことや、自分の好きな人のことばかり考えている私は、王太子の婚約者にふさわしくないのかもしれない。

 私が本気で落ち込んでいるのに気づいたのか、リュシアン様は戸惑い顔になった。

「おい、ジスレーヌ。そこまで落ち込むことないだろ」

「けれど……私自分のことばかり考えていて、恥ずかしいです」

 絞り出すようにそう言ったら、リュシアン様は仕方なそうに言った。

「……今回公爵が王位簒奪を企んでいたことがわかったのは、そもそもお前の言葉のおかげだ。そこは感謝している」

「リュシアン様……」

「あと、めちゃくちゃ迷惑だったけど、会議室にお前が血相変えて飛び込んで来たのを見たときは、その……少し嬉しかった。めちゃくちゃ迷惑だったけどな!」

「リュシアン様……!」

 感極まって思わず抱き着こうとしたら、リュシアン様に調子に乗るなと押しのけられた。しょんぼりしていたら、リュシアン様はぽんぽん頭を撫でてくれた。
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