恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「いっそ専務を片想いの相手にすればよかったのに。長年連れ添ってるんだから」


「何回も言ってるけど、専務はただの友人よ」


「社内と周囲の女子たちはそうは思っていないけどね。なんでよりによって、あんな一筋縄じゃいかない御曹司に片想いするんだか」


さすが親友、遠慮なく痛いところを突いてくる。


「……私だって恋する相手を選べたらどんなにいいかって思ってる」


だって、彼に私の想いは届かない。


「眞玖はなにかにつけて困難な道を選びたがるわよね。それが長所でもあり短所でもあるけど」


呆れたように蘭が小さな息を吐く。

四年近く一度も顔を合わせず、連絡すらない、学生時代からのもうひとりの友人。


『――だから眞玖はその日まで覚悟しておけよ?』


『もう、知らんふりはしない』


ねえ、あれはどういう意味?


空港で、口づけたのはなぜ?


自問自答を繰り返し、淡い期待をしては、何度打ち消しただろう。

彼のことはきっぱり忘れて前に進むべきだとわかっているのに、私の心は頑なに彼を想う。

二十代の四年間はあっという間に過ぎていくが、その輝きと重みは凄まじい。


そのうち二十九歳の誕生日がやってくる。


……いい加減もう潮時だろう。
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