とおくから君にすきって




 放課後。

 校舎3階の空き教室。

 そこが一番の絶景スポット。

 君のことがよく見える、私だけの特別な場所。

 君は真剣な顔でグラウンドを走る。

 陸上部の君。

 一生懸命、汗に濡れながら走る君の姿。

 かっこよくて、キュンとする。

 私の……王子様。

 私も君と一緒の部活に入りたいけど……

 私は運動神経が悪いし、幼い頃から体が弱くて。

 走ることなんてほとんどできなくて。

 だから、君と同じ部活に入れない。

 ほんとは、君と同じ時間をたくさん過ごしたいけど……

 ………

 君と初めて隣の席になって。

 私は内気で引っ込み思案だから、

 最初は君に話しかけられてもろくに話せなくて。

 でも、君が毎日話しかけてくれたから。

 いつしか、君と話せることができるようになって。

 いつしか……君のことが好きになってた。

 …くん……き。

 ……っ

 真っ暗な空き教室が、夕日色に染まる。

 私は君のことを見つめながら、ぽつりぽつりと言う。

 ……す…き。

 ──くんのことが……好き……です。

 部活仲間と笑顔で話す君を、ひとり見つめながら。

 届かない想いを呟く───




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