隠れ御曹司の恋愛事情(改稿版)
一人暮らしには少し広い程度の部屋は綺麗に片付いていて、朝日がよく入っていた。
(一般的な部屋だよね?)
桐山くんが御曹司だという噂は恐らく真実ではないのだろう。
そのことにホッとしていると、彼がトレイに乗せて、フレンチトーストとコーンスープを運んできてくれた。
「ごめんね。ありがとう」
「いいえ。さっそく食べましょうか」
「うん」
フレンチトーストの横にはホイップクリームとベリーが乗せられていて、凄く美味しそうだ。
それにシーザーサラダの上にはクルトンとカリカリに焼いて細かく刻んだベーコンが和えられているし、スープを飲めば、コーンがゴロゴロと入っている。
「……おいしい」
「お口に合って良かったです」
「桐山くんはよく料理をするの?」
「時間があればするくらいです。でも今日は桃子さんが居るので張り切ってみました」
照れたように笑った桐山くんに釣られて、わたしも笑う。
そして、同時に今まで一方的に避けていたことが申し訳なくなった。
「桐山くん」
「どうしました?」
暗い表情をしたわたしを彼は怪訝そうな顔で見つめた。
「あの、今まで避けてしまってごめんなさい」
突然謝ったわたしに瞠目して、それから彼がフォークを置いて向き合った。
「貴女が謝ることではありません。それに謝らなければいけないのは僕の方だ」
「桐山くんが謝ること……」
「僕のことで女性社員達が貴女に辛い態度を取っていることを知っていました。それなのに、僕は補佐役を他の誰かに変えることをしなかった」
「それは、どうして?」
「貴女の仕事はいつも早いのに丁寧で、僕はそれに支えられてきたからです」
真っ直ぐにわたしを見つめる瞳。
頑張って努力してきたことが自分に返ってきた気がして、胸が暖かくなる。
「正直最初は補佐役はある程度仕事をこなしてくれるのなら誰でも良いと考えていました。けれど、桃子さんは仕事に手を抜くことなく、それでいて誠実だった」
「誠実って……」
「女性社員に僕への橋渡し役を断っていましたよね? あれって何度かあったんじゃないですか?」
「それは……」