先生、それは取材ですか?

「……絶対に壁から動かないから」

私は布団をぎゅっと握りしめ、橘との距離を最大限に取る。

「先生、本当にそんなに警戒しなくても」

「いや、信用ならない」

「さっき“多分”って言ったのは、先生があんまりにも可愛いこと言うからですよ」

「は!? 可愛いとか言うな!!!」

「ほら、そういうとこ」

橘がクスクス笑う。なんかもう、すでにペースを握られてる気がする……

「……もう寝る」

「そうですね。僕も寝ます」

そう言いながら、橘は布団に入った。

(……ほんとに寝るのかな)

ちらっと様子を窺うと、橘は普通に横になってる。

「……」

(大丈夫……?)

警戒しながらも、私も布団に潜り込む。

しばらくの沈黙。

……と思ったら。

「先生、寝れそうですか?」

「!? 話しかけるな!」

「緊張してるのかなと思って」

「当たり前でしょ!?」

「まぁ、僕も少しは意識してますよ?」

「……は?」

「先生とこうやって同じ部屋で寝るって、なんか……」

橘が少し考え込むように言う。

「……妙にドキドキしますね」

「ッ!!!!」

心臓が止まりそうになった。

「おやすみなさい、先生」

橘は静かに目を閉じる。

(いやいやいや!! そんなこと言われたら余計寝れないじゃん!!!)

私は布団をかぶりながら、心臓の音を必死に抑えようとしたけど……

その夜、全然眠れなかった。
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