先生、それは取材ですか?
「え……」

思わず言葉を失う。

「母親に引き取られたんですけど、まぁ仕事が忙しくて、ほとんど家にいなくて」

「……そっか」

「だからかなぁ……あんまり人に期待するのが苦手なんですよね」

橘の表情は、いつもの飄々とした感じとは違った。

「どうせ最後は離れていくし、本気になっても意味ないなーって、小さい頃から思ってました」

「……橘」

「だから、恋愛もたぶんそうで。付き合っても、『どうせいつか終わるしな』って思っちゃうんです」

「……」
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