先生、それは取材ですか?
「……やっと落ち着いたわね」
私はソファに沈み込み、大きく息をついた。
「ですねぇ。炎上しかけたときはどうなるかと思いましたけど」
橘も向かいの椅子に座り、スマホをポケットにしまう。
「出版社からの公式声明で、やっと沈下したわね……。『あくまで創作上の関係であり、実際の担当編集とは一切関係ございません』って」
「まぁ、それでファンの方も納得してくれたならいいんですけど」
「……もう、こんなの二度とゴメンだわ」
私はテーブルに突っ伏した。
「にしても、先生って本当に有名になりましたよね」
「いやいや、もう騒動は終わったんだから、その話も終わらせて」
「でも事実じゃないですか。人気作家・椎名先生、ついに世間に知れ渡る」
「もういいの!!!」
私は枕を掴んで橘に投げつけた。橘は軽々とキャッチして笑う。
「まぁ、沈静化したとはいえ、先生の知名度は一気に上がりましたし……これからが勝負ですね」
「……はぁ。もう好きにして」
「じゃあ、次回作の打ち合わせしましょうか」
「仕事の話はもうちょっとあと!!!」
私はソファにうずくまり、しばらく動かなかった——。