先生、それは取材ですか?

「で、どこに行くの?」

私は橘と並んで歩きながら尋ねた。

「先生のアイデアが浮かびそうな場所……ですよね?」

「そうだけど」

「じゃあ……ラブホとかどうです?」

「はぁ!??」

思わず立ち止まる。

「だって先生、大ヒット中のエロ漫画家じゃないですか。リアルな雰囲気を知るのも取材のうちかと」

「バカ言わないで!! そんなとこ行かなくても想像でなんとかなるわよ!」

「でも最近スランプなんですよね?」

「ぐ……」

「ほら、意地張らないで。実際の雰囲気を感じたら、いいネタ浮かぶかもしれませんよ?」

橘はニヤニヤしながら私を見てくる。

「……他にないの?」

「じゃあ、バーとか?」

「……まぁ、それなら」

「決まりですね。先生、お酒強いんですか?」

「弱くはないけど……」

「じゃあ今日は飲ませますね」

「は?」

「普段理性で抑えてるものが、お酒で解放されるかもしれませんし」

「はぁ!??」

橘の言葉に、なんだか嫌な予感がした——。
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