ページのすみで揺れていたもの
4年目のはじまり、再び交わる道
202⚪︎年4月3日
――看護師になって、はや4年目。

思ってた以上に、あっという間だった。
でも、ちゃんと“積み重ねてきた”って感覚もある。
日々、命と向き合う毎日で、振り返る余裕もなかったけど……少しだけ、今なら立ち止まって振り返れる気がする。

1年目。
何もできなくて、毎日が「ごめんなさい」だった。
採血も点滴も時間がかかって、先輩に代わってもらってばかり。
患者さんの死を初めて経験したときは、家に帰って泣いた。
それでもやめたいとは、一度も思わなかった。

2年目。
少しずつ、できることが増えてきた。
「ありがとう」って言われることが、嬉しくてたまらなかった。
でも、できることが増えるほど、責任も重くなる。
“判断すること”の怖さを知ったのも、この頃。

3年目。
新人を指導する立場になって、ようやく自分が一人前になれた気がした。
でも同時に、人に教えることで自分の未熟さも痛いほど見えてきた。
自信と不安が入り混じる毎日。
それでも、やっぱり患者さんの笑顔を見るたびに、「看護師になってよかった」と思える。

そして今。
あのトンネル事故から約5年。
私は今も、変わらず“命”というものの前に立っている。

失われていく命も、必死に繋がる命も、
どれも軽くなんて扱えない。
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