ページのすみで揺れていたもの
金曜の午後、近くのスーパーから帰ってきて、
淹れた紅茶をテーブルに置いた瞬間――
インターホンが鳴った。
(宅配……じゃないよね?何も頼んでないし)
訝しみながらドアスコープを覗くと、そこにいたのは――
「……うそ」
藤澤先生だった。
白衣ではなく、私服。
でも、その立ち姿は変わらず背筋が伸びていて、目は真っ直ぐ。
あんな逃げ方したのに何故か私はドアを開けてしまった。
藤澤「……休み中、すまん」
それだけ言って、立ったまま視線を外した。
私は一瞬戸惑ったけれど、結局、黙って玄関に通した。
藤澤先生が部屋に入って、私はお茶も出さずに立ちすくんでいた。
何を言えばいいのか分からないまま、ふたりの間に妙な沈黙が流れる。
藤澤は、部屋の隅の本棚やテーブルの上を何気なく見回したあと、
机の上に置かれていた1冊のノートに目をとめた。
藤澤「……これ、勉強のやつ?年季入ってるな」
そう言いながら、勝手に手を伸ばしてページを開こうとする。
「……ちょっ、やめてください!」
私は慌てて彼の手からノートをひったくった。
一拍、藤澤が目を丸くした後、小さく笑った。
藤澤「悪い。反応的に、ただのメモじゃなさそうだな」
「……別に、たいしたこと書いてません」
思わずそっけなく言ってしまった。
藤澤は、それ以上何も言わず、代わりに部屋の中をゆっくりと見渡した。
藤澤「生活感あるな。仕事以外でも、ちゃんと生きてたんだなって思う」
独り言なのかそう呟いていた。
何気ない言葉だったけど、生きてきた証はノートの日記だけじゃない、そう思えた一言だった。
淹れた紅茶をテーブルに置いた瞬間――
インターホンが鳴った。
(宅配……じゃないよね?何も頼んでないし)
訝しみながらドアスコープを覗くと、そこにいたのは――
「……うそ」
藤澤先生だった。
白衣ではなく、私服。
でも、その立ち姿は変わらず背筋が伸びていて、目は真っ直ぐ。
あんな逃げ方したのに何故か私はドアを開けてしまった。
藤澤「……休み中、すまん」
それだけ言って、立ったまま視線を外した。
私は一瞬戸惑ったけれど、結局、黙って玄関に通した。
藤澤先生が部屋に入って、私はお茶も出さずに立ちすくんでいた。
何を言えばいいのか分からないまま、ふたりの間に妙な沈黙が流れる。
藤澤は、部屋の隅の本棚やテーブルの上を何気なく見回したあと、
机の上に置かれていた1冊のノートに目をとめた。
藤澤「……これ、勉強のやつ?年季入ってるな」
そう言いながら、勝手に手を伸ばしてページを開こうとする。
「……ちょっ、やめてください!」
私は慌てて彼の手からノートをひったくった。
一拍、藤澤が目を丸くした後、小さく笑った。
藤澤「悪い。反応的に、ただのメモじゃなさそうだな」
「……別に、たいしたこと書いてません」
思わずそっけなく言ってしまった。
藤澤は、それ以上何も言わず、代わりに部屋の中をゆっくりと見渡した。
藤澤「生活感あるな。仕事以外でも、ちゃんと生きてたんだなって思う」
独り言なのかそう呟いていた。
何気ない言葉だったけど、生きてきた証はノートの日記だけじゃない、そう思えた一言だった。