今日から私は上司の奴隷になりました
「今後の連絡は、私用スマホのラインで行う。会社のメールは傍受される恐れがあるから使うな」

という事で、ご主人様とラインの”友だち登録”を行った。

「ご主人様のラインの名前って、”コナン”なんですね。どうしてですか?」

「俺があの少年探偵に憧れてるからだ」

「憧れる探偵なら、コナンくんよりシャーロック・ホームズじゃないんですか?」

「いや、あの人は偉大過ぎて、俺なんかじゃおこがましい。それより、なんでおまえは”どじょう”なんだ?」

「それは、同じ苗字の政治家のあだ名です」

「……ああ、なるほど。あまりいい趣味じゃないな」

「よく言われます」

明日の朝、ご主人様が車で私の家まで迎えに来てくれるとの事で、私はご主人様に住所を告げた。ちなみに私は、千葉市の郊外にある実家で両親と暮らしている。

「千葉市在住の野田か。紛らわしいな?」

「よく言われます」


私は家に帰ると、さっそく出張の準備をした。つまり、部屋着、下着、ストッキング、化粧セット、ヘアケア用品、薬、生理用品等々をスーツケースに詰めた。考えてみたら、出張するのは人生で今回が初めてだ。

明日から出張する事は、もちろん母に告げてある。行き先は静岡の工場で、期間は未定という事だけ、だけど。

「滞在中はホテルに泊まるの?」
「あ、その辺りの事は、聞いてなかった」

「聞くって事は、どなたかと一緒なの?」

「うん、上司と一緒」

母には上司、つまりご主人様の話はしてある。イケメンだけど俺様な上司、みたいな説明をしていた。

「あらま。もちろん、部屋は別々よね?」

「当たり前でしょ?」

って母には言ったものの、あのご主人様の事だから、同室という可能性はあるかもしれない。

何日か分からないけど、もしご主人様と同じ部屋で寝泊まりするとなると……いやん。

つい、不埒な想像をしてしまう私だった。
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