隣の部署の佐藤さんには秘密がある
6.はじめての失恋
レセプションまでの1週間は忙しく、前日まで残業が続いていた。佐藤は残業を終えると、親友の健斗が経営するBARへ向かった。
「健斗ぉ、ウイスキーちょうだい……」
「酒でいいのか?明日レセプションなんだろ?」
「うん……疲れちゃった……」
ウイスキーを一口飲んでカウンターに突っ伏した。レセプションの前日は、早めに上がって当日に備えたいのに、こんなに遅くなってしまった。徹夜にならなかったことは救いだが、疲労困憊だ。
「彼女を落とすなんて意気込んでたのに大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うけど、もう少し距離を詰めたかったな。」
運良くレセプションに誘うことができたところまでは順調だった。こんなに忙しくなければ、もう少し仲を深められたはずだ。
「連絡先も聞けてないんだ。」
「連絡先を知らないなんて初めてじゃないか?」
「そうかも……」
「連絡先知らないのに、明日どうやって行くんだ?」
「現地で待ち合わせてるんだ。まぁ、会えばなんとかなる。」
とはいえ、レセプションで会えば必ず落とせる。自信ではなく当たり前のことだと思っていた。
「まさか、突然彼女の前に登場する気じゃないだろうな。」
「そうだよ。あの俺が現れたら一発でしょ。」
「それはやめた方がいい。絶対に失敗する。」
「なんで!?あの俺だよ!?」
「彼女は今のお前が来ると思ってるんだろ?」
「宮島さんは今の俺が来ると思ってる。そこへあの俺が現れたら落ちるでしょ、絶対。」
「落ちる前に拒否られる。」
「そんなはずない。あの俺が落とせないわけがない。」
健斗は苦笑いした。大層な自信だが事実だ。佐藤に落とせない女はいない。だが今回は違う。
「突然あのお前が現れたらナンパだと思われて終わりだ。それが普通の感覚なんだよ。見た目が違うことは自覚してるんだろ?」
「あの俺が落とせないってこと?」
「下手したら無視されるだろうな。私はこんな人知りませんってな。」
健斗の言葉を聞いて佐藤は絶句した。そんなことは考えてもみなかった。
「サンチェス=ドマーニ着るとこうなりますって事前に見せられれば良かったが、連絡先がわからないならどうしようもないな。」
「終わった……」
ようやく理想の彼女を見つけたのに計画が丸潰れだ。健斗は落ち込む佐藤を見て笑った。
「お前には無理なのかもな。前の生活に戻ったらどうだ?」
「やだよ!あぁー!もう一杯ちょうだい!」
健斗はウイスキーに見せかけた烏龍茶を差し出した。佐藤はグラスを荒々しく持ち上げて一気に流し込んだ。
「ゔっ!騙したな!」
「今日はもうやめとけ。明日に響くだろ。」
「飲まなきゃやってられないよ、もう!」
「今のお前のまま行くのはだめなのか?」
「サンチェス=ドマーニのレセプションだよ?このまま行くわけないでしょ。」
「だったら別人のふりをして行くしかないな。」
「別人?」
「彼女は今のお前が来ると思ってる。だから、お前が来られなくなったから、代わりに来たとか言って別人を装う。その時点で拒否られたら終わりだが、お前の代わりなら仕方なく最後まで付き合ってもらえるかもしれない。ワンチャン落とせる可能性もある。」
「それで落としたら今までと一緒じゃん。」
「あのお前で落とそうとしてたんだから一緒だろ?」
「そうか、今の俺が落とさなきゃだめだったんだ!あー!もったいぶらずに告白しちゃえばよかった!」
「今回は拒否られるのを覚悟で行け。次回に挽回しろ。」
「そうする。それしかない。」
そうして別人を装ったが失敗に終わった。でもさきは期間限定の彼女になることを受け入れてくれた。お腹が空いたと言われたから部屋で食事をしようと言っただけなのに断られた。
「あの、お1人ですか?」
「え?」
声をかけられて現実に引き戻された。人が少なかった展望フロアには、いつの間にか人が増えている。声をかけてきた女性は、全身サンチェス=ドマーニ。レセプションが終わったのかもしれない。
「すみません。」
足早にエレベーターへ向かうと人でごった返していた。佐藤は非常階段へ出るなり電話をかけた。しかしコール音が鳴るだけで相手は出ない。佐藤はとぼとぼと階段を降りていった。
「健斗ぉ、ウイスキーちょうだい……」
「酒でいいのか?明日レセプションなんだろ?」
「うん……疲れちゃった……」
ウイスキーを一口飲んでカウンターに突っ伏した。レセプションの前日は、早めに上がって当日に備えたいのに、こんなに遅くなってしまった。徹夜にならなかったことは救いだが、疲労困憊だ。
「彼女を落とすなんて意気込んでたのに大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うけど、もう少し距離を詰めたかったな。」
運良くレセプションに誘うことができたところまでは順調だった。こんなに忙しくなければ、もう少し仲を深められたはずだ。
「連絡先も聞けてないんだ。」
「連絡先を知らないなんて初めてじゃないか?」
「そうかも……」
「連絡先知らないのに、明日どうやって行くんだ?」
「現地で待ち合わせてるんだ。まぁ、会えばなんとかなる。」
とはいえ、レセプションで会えば必ず落とせる。自信ではなく当たり前のことだと思っていた。
「まさか、突然彼女の前に登場する気じゃないだろうな。」
「そうだよ。あの俺が現れたら一発でしょ。」
「それはやめた方がいい。絶対に失敗する。」
「なんで!?あの俺だよ!?」
「彼女は今のお前が来ると思ってるんだろ?」
「宮島さんは今の俺が来ると思ってる。そこへあの俺が現れたら落ちるでしょ、絶対。」
「落ちる前に拒否られる。」
「そんなはずない。あの俺が落とせないわけがない。」
健斗は苦笑いした。大層な自信だが事実だ。佐藤に落とせない女はいない。だが今回は違う。
「突然あのお前が現れたらナンパだと思われて終わりだ。それが普通の感覚なんだよ。見た目が違うことは自覚してるんだろ?」
「あの俺が落とせないってこと?」
「下手したら無視されるだろうな。私はこんな人知りませんってな。」
健斗の言葉を聞いて佐藤は絶句した。そんなことは考えてもみなかった。
「サンチェス=ドマーニ着るとこうなりますって事前に見せられれば良かったが、連絡先がわからないならどうしようもないな。」
「終わった……」
ようやく理想の彼女を見つけたのに計画が丸潰れだ。健斗は落ち込む佐藤を見て笑った。
「お前には無理なのかもな。前の生活に戻ったらどうだ?」
「やだよ!あぁー!もう一杯ちょうだい!」
健斗はウイスキーに見せかけた烏龍茶を差し出した。佐藤はグラスを荒々しく持ち上げて一気に流し込んだ。
「ゔっ!騙したな!」
「今日はもうやめとけ。明日に響くだろ。」
「飲まなきゃやってられないよ、もう!」
「今のお前のまま行くのはだめなのか?」
「サンチェス=ドマーニのレセプションだよ?このまま行くわけないでしょ。」
「だったら別人のふりをして行くしかないな。」
「別人?」
「彼女は今のお前が来ると思ってる。だから、お前が来られなくなったから、代わりに来たとか言って別人を装う。その時点で拒否られたら終わりだが、お前の代わりなら仕方なく最後まで付き合ってもらえるかもしれない。ワンチャン落とせる可能性もある。」
「それで落としたら今までと一緒じゃん。」
「あのお前で落とそうとしてたんだから一緒だろ?」
「そうか、今の俺が落とさなきゃだめだったんだ!あー!もったいぶらずに告白しちゃえばよかった!」
「今回は拒否られるのを覚悟で行け。次回に挽回しろ。」
「そうする。それしかない。」
そうして別人を装ったが失敗に終わった。でもさきは期間限定の彼女になることを受け入れてくれた。お腹が空いたと言われたから部屋で食事をしようと言っただけなのに断られた。
「あの、お1人ですか?」
「え?」
声をかけられて現実に引き戻された。人が少なかった展望フロアには、いつの間にか人が増えている。声をかけてきた女性は、全身サンチェス=ドマーニ。レセプションが終わったのかもしれない。
「すみません。」
足早にエレベーターへ向かうと人でごった返していた。佐藤は非常階段へ出るなり電話をかけた。しかしコール音が鳴るだけで相手は出ない。佐藤はとぼとぼと階段を降りていった。