私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
そして1週間後の今、幸は三崎に連れられて
ビーナスの馬房に来ている。

栗毛の優しい顔をしたビーナスは、
幸に鼻先を摺り寄せて甘えてくる。

「可愛い」

と思わず呟くと

「ビーナス、よかったな。お前の名前の
由来になった青い瞳のビーナスの
幸さんだ。今日は幸さんが見ているからな
頑張れよ」

そういって三崎はビーナスの首を
励ますように優しくたたいた。

ビーナスは分かったというように頭を
何度も縦に振っていた。

「まるで三崎さんの言う事がわかるようですね
賢い馬ですね、ビーナスは」

「うん、ビーナスはすごく賢い馬だと思います。
何頭も見てきたけれどビーナスは言葉が
わかるんじゃないかと思うときがあるんだ」

「ビーナス、すごいわね。あなたは賢くて
美しいわ。1番で帰って来てね。
楽しみに見てるわよ」

そういって二人は早めのお昼を食べるのに
競馬場の中のレストランは騒がしいので
競馬場を出て10分ほど歩いたところにある
落ち着いた店に行こうと三崎は言ったのだが、
幸は競馬場内のレストランで十分だと言って、
三崎を引っ張っていった。

和食のレストランがあってまだ昼前なので
空いていた。

「三崎さんはこんなところでは食べたことが
ないでしょうね。私はフードコートでも
よかったんですよ」
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