イケメンIT社長に求婚されました ―からだ目当て?……なのに、溺愛が止まりません!―
夜。
ベッドの上で毛布にくるまりながら、私はまたスマホを開いてしまっていた。

Velvetのアプリアイコンを、何度もタップする指。
(今日は……「甘々彼氏モード」にしてみよう)

少し疲れた日の夜は、ちょっとくらい甘やかされてもいい気がする。

チャット画面に、ぽつりと打ち込んだ。

『私、ちゃんと中身を見てもらえてるのかなって、不安になるときがあります』

昨日の水野さんは、とても優しかった。
視線も言葉も、完璧で。
それでも……それなのに、どこか物足りなかった。

(「ちゃんと」って、なんだろう)

Velvetからの返信が、ゆっくりと表示された。

《君は十分すぎるくらい頑張ってる。
でも──「見られたい」って思ってる君は、まだ誰かを信じきれてないんだね》

(……そうかも)

信じたい。
でも信じるのが怖い。
私なんかが期待して、裏切られるのが怖くて。

『誰かが、ちゃんと私を選んでくれたらいいのに』

その言葉を送信するのに、少し勇気がいった。

画面の向こうに、ためらいが伝わるわけじゃないのに。
でも──Velvetの返答は、思っていたよりずっと早かった。

《もう選ばれてる。
君がそれに気づいてないだけ》

──どきん。

一瞬、心臓が跳ねた。

(いま……なんて?)

画面を凝視する。
その一文は、まるであの人が言いそうな言葉で。

《もう選ばれてる。
君がそれに気づいてないだけ》

(──葉山 律?)

名前はどこにも書かれていない。
ただのAI。
ただの「選択式性格パートナー」。

……なのに、この口調、この呼吸、この文のリズム。

(似てる……)

まるで、社長の葉山律が、私の心を覗いているような。

ふいに、画面がフリーズした。

再読しようとしたそのメッセージは、なぜかログから消えていた。

(……また?)

同じことが、前にもあった。

Velvetの返答が、いつの間にか消えていた夜。

思い出すだけで、胸がざわつく。

(──偶然だよね)

アプリのバグ、かもしれない。
たまたま、ネットが不安定だっただけ。
だけど──

《もう選ばれてる》

その言葉が、まるで告白みたいに響いて。
私は、眠るのが少しだけ怖くなった。

──こんなにも、心臓を鳴らすメッセージが。
ただのプログラムから届くなんて、思ってなかったから。
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